会社の近くの、少し広い居酒屋。
平日の夜なのに、たくさんの人がいて、少し、暑い。
20:30。帰る人と入ってくる人。
店のドアが開いて、男の人と、女の人が入って来た。
男の人の顔が見えて、私は固まった。
心臓がバクバクする。
右側ではタクヤとアヤちゃんがワイワイ喋っていて、目の前には、葉月がいて。葉月が、女の子といて。それもめちゃくちゃ可愛い子と、いて。
葉月がこっちを向きそうになって、慌ててバッと顔を逸らす。
葉月とその女の子は、私たちから少し離れた席に通された。
窓際のカウンター席。
ガラスに面したその席に、並んで2人で座る。葉月がその子の鞄を預かって、壁際に置いてあげる。
こんなとこで会えるなんてなんつう偶然。
そして、なんて不運なんでしょう。
彼女かな?彼女か。そりゃ彼女くらいいるわな〜!
目の前のグラスに残っていた梅酒をゴクゴクゴクって飲む。
「おうおうどした。」タクヤが笑って私を見て、それから、「えっ?花ちゃん泣いてる?」って私の顔を覗き込む。
私もアヤちゃんみたいに、ガハハって笑えればよかったのに。



