【花side】
ユウヤの家。
「この前、飲み会にシノダさんいてさぁ」
「あ〜あのセクハラおやじ笑」
ユウヤが笑う。
「そう〜!まじできもかった〜。池田さんが間に割って入って来てくれてさぁ。」
「池田さん格好いいよね」
「うん。私数年後あんな風になれるかな」
ユウヤが私の頭をぽんぽんってする。
茄子をフライパンで焼く。しんなりしてきて、このまま食べても美味しそう。
ごま油のいい香り。
「いい匂い〜」
ユウヤがニコってする。
食材には旬の季節があって、茄子の旬が夏だと教えてくれたのはユウヤだった。私は、それから茄子が食べられるようになった。
………なのにどうして。
リビングで麻婆茄子を食べる。美味しいね〜って笑う。
ふとユウヤのスマホが目に入る。ユウヤは、この前の花火大会の私の浴衣姿の写真を待ち受けにしていた。
………どうして。
ベッドの中でウトウトする。
ユウヤは隣で小説を読んでいた。まどろみの中で、ページを捲る音がする。それから、ベッドサイドのオレンジの灯りをカチって消す音。ユウヤが私のおでこにちゅ、って軽くキスをする。私は目を瞑ったまま、ユウヤが向こうに向く気配を感じる。
瞑った目から、涙が溢れた。
あぁもう、どうして。
こんなの、ダメだなぁ。
なのに、なんで。
今、私、あなたに会いたい。



