「あ、そうだ、誰か探してるんでしょ。手伝う。」
「あ、そう、友達……。」
「友達も心配してんじゃない?榎本、どの辺にいたの?」
葉月が、ところせましとレジャーシートがひかれている会場を見渡す。
「えっと…。」額に手を当てる。「全然わかんない……。」
スマホの画面を見ると、18:59。「やばいやばい。もう始まっちゃう。」
焦ってる私を見て、葉月が笑う。「困ったなあ。」そう言いながら、葉月はちっとも困ってなんかなさそうだった。昔からそうだ。私はこの人の、焦った顔を見たことがない。
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「てか、葉月は?早く戻った方がいいよ。もう始まっちゃうよ。」
葉月が何か言おうと口を開けたとき、背後でドーンって大きい音がした。2人で後ろを振り向くと、おっきい花火が夜空に咲いていた。
「あ、始まった。」葉月が呟く。
「てか、綺麗……。」
私たちは顔を見合わせて、ふふ、って笑った。



