ほんの二週間前は、自分がもう絵は描けないんじゃないか、と思い詰めていた。それが、この家のアトリエで咳が出ないのがわかり、さらに藤原の兄の絵に触発されて、田代の肖像画を一気に描き上げることができた。
「そうか。それはよかった。絵は明日見せてもらうとして…春奈さん、疲れているだろう。よかったら温泉でも行かないか。ちょうど俺の仕事もキリがいいところまですんだんだ。三日くらいなら、一緒に過ごせる」
「…!本当ですか」
思いがけない申し出に、気持ちが弾む。藤原とは、毎朝の朝食だけで満足しているつもりだったが、改めて三日も一緒にいられると思うと、胸がときめく。
「すごく嬉しいです。私も、藤原さんとお出かけしたいです」
「そうか。どこがいいかな。九州や北海道まで足を伸ばすのもいいな。春奈さんは、どこか行ってみたいところ、ある?」
旅行なんて、高校の修学旅行以来で、行きたいところなんて、考えたこともなかった。
いろいろ考えをめぐらして、はっとする。
「あの…ありました。行きたいところ。でも、日本じゃないかもしれないので言いにくいんですけど…」
「何だよ。これでも藤原サイクルの社長だぞ。海外でも連れて行ってやる」
「えっと…その…藤原さんのお兄さんにお会いしたいです」
「うん?兄貴に?」
「はい。あんなすごい絵を描いた人にまず、お会いしたいし、それと…あのルリさんの絵をお返ししたいです。きっと今でも探してらっしゃるんじゃないかと思って」
藤原はしばらく考えた。
「…そういえば、夏にこっちで展覧会をやるって言ってたな。まだ起きてるだろう。電話してみよう」
こっち?じゃあ日本で会えるんだろうか。春奈はほっとした。自分の申し出で海外に行かせてもらうのは気が引けた。費用が随分、かかってしまう。
「話がついたよ、春奈さん。兄貴は、今、広島にいる。そっちのホールで、展覧会をやるそうだ。春奈さんは絵を見るのも好きだから、兄貴にも会えて、絵も見られる。滅多にないチャンスだ。一緒に行こう」
春奈は、目の前が、ぱあっと明るくなった。
あんな素敵な絵を描いた人に会える喜びと、たくさんの絵が見られること。そして何よりも、初めての藤原との遠出だ。わくわくしない訳がない。
「はい、行きたいです。すごく、すごく行きたい!」
田代の肖像画が完成している、という高揚感と藤原との旅行を楽しみにする気持ちで、胸がいっぱいになる。
「何だか、いいことばかりで、おかしくなりそう」
「そう?じゃ、これはどうかな」
藤原は、すっと立ち上がると、向かい合わせだった春奈の隣に行き、すぐそばに座った。
ゆっくり顔が近づいてきて、唇が重なる。
ふわっとした唇の感触に春奈がドキドキしていると、舌がするりと入ってきて、我が物顔で、春奈の舌を絡めとる。それだけでもう、春奈は身体が熱くなってしまって、感じていることを藤原に知られそうで恥ずかしくなる。
じんとする腰を太ももをきつく合わせて感じすぎないようにしたいのだが、繰り返されるキスにそんな想いは甘く崩れていく。
そんな中、胸がひやっとした。いつの間に部屋着のボタンを外したのか、藤原がブラのカップの下の胸を直に触っている。指先が胸の頂をこする。
「やっ、ああん」
初めて感じる快感に、声が出てしまった。それを塞ぐように、藤原がまた春奈にキスをする。舌がからんで、春奈も夢中になって応じてしまう。
どうにかなりそう…!
そう思った瞬間に、やっと藤原のキスが終わり、胸からも手が離れた。
「ダメだ、止まらなくなりそう」
荒い息をさせて、藤原は言った。春奈は、ぼうっとしてとろんとした目で藤原を見ることしかできない。
「…この続きはまた今度な。そろそろ寝るよ」
寝室へ向う藤原の後ろ姿を見ながら、春奈は思った。
まだ続きがあるのか…身が持つかな…。想像するともっと、顔が赤くなりそうで、春奈は考えちゃダメ!と自分を戒めた。
「そうか。それはよかった。絵は明日見せてもらうとして…春奈さん、疲れているだろう。よかったら温泉でも行かないか。ちょうど俺の仕事もキリがいいところまですんだんだ。三日くらいなら、一緒に過ごせる」
「…!本当ですか」
思いがけない申し出に、気持ちが弾む。藤原とは、毎朝の朝食だけで満足しているつもりだったが、改めて三日も一緒にいられると思うと、胸がときめく。
「すごく嬉しいです。私も、藤原さんとお出かけしたいです」
「そうか。どこがいいかな。九州や北海道まで足を伸ばすのもいいな。春奈さんは、どこか行ってみたいところ、ある?」
旅行なんて、高校の修学旅行以来で、行きたいところなんて、考えたこともなかった。
いろいろ考えをめぐらして、はっとする。
「あの…ありました。行きたいところ。でも、日本じゃないかもしれないので言いにくいんですけど…」
「何だよ。これでも藤原サイクルの社長だぞ。海外でも連れて行ってやる」
「えっと…その…藤原さんのお兄さんにお会いしたいです」
「うん?兄貴に?」
「はい。あんなすごい絵を描いた人にまず、お会いしたいし、それと…あのルリさんの絵をお返ししたいです。きっと今でも探してらっしゃるんじゃないかと思って」
藤原はしばらく考えた。
「…そういえば、夏にこっちで展覧会をやるって言ってたな。まだ起きてるだろう。電話してみよう」
こっち?じゃあ日本で会えるんだろうか。春奈はほっとした。自分の申し出で海外に行かせてもらうのは気が引けた。費用が随分、かかってしまう。
「話がついたよ、春奈さん。兄貴は、今、広島にいる。そっちのホールで、展覧会をやるそうだ。春奈さんは絵を見るのも好きだから、兄貴にも会えて、絵も見られる。滅多にないチャンスだ。一緒に行こう」
春奈は、目の前が、ぱあっと明るくなった。
あんな素敵な絵を描いた人に会える喜びと、たくさんの絵が見られること。そして何よりも、初めての藤原との遠出だ。わくわくしない訳がない。
「はい、行きたいです。すごく、すごく行きたい!」
田代の肖像画が完成している、という高揚感と藤原との旅行を楽しみにする気持ちで、胸がいっぱいになる。
「何だか、いいことばかりで、おかしくなりそう」
「そう?じゃ、これはどうかな」
藤原は、すっと立ち上がると、向かい合わせだった春奈の隣に行き、すぐそばに座った。
ゆっくり顔が近づいてきて、唇が重なる。
ふわっとした唇の感触に春奈がドキドキしていると、舌がするりと入ってきて、我が物顔で、春奈の舌を絡めとる。それだけでもう、春奈は身体が熱くなってしまって、感じていることを藤原に知られそうで恥ずかしくなる。
じんとする腰を太ももをきつく合わせて感じすぎないようにしたいのだが、繰り返されるキスにそんな想いは甘く崩れていく。
そんな中、胸がひやっとした。いつの間に部屋着のボタンを外したのか、藤原がブラのカップの下の胸を直に触っている。指先が胸の頂をこする。
「やっ、ああん」
初めて感じる快感に、声が出てしまった。それを塞ぐように、藤原がまた春奈にキスをする。舌がからんで、春奈も夢中になって応じてしまう。
どうにかなりそう…!
そう思った瞬間に、やっと藤原のキスが終わり、胸からも手が離れた。
「ダメだ、止まらなくなりそう」
荒い息をさせて、藤原は言った。春奈は、ぼうっとしてとろんとした目で藤原を見ることしかできない。
「…この続きはまた今度な。そろそろ寝るよ」
寝室へ向う藤原の後ろ姿を見ながら、春奈は思った。
まだ続きがあるのか…身が持つかな…。想像するともっと、顔が赤くなりそうで、春奈は考えちゃダメ!と自分を戒めた。



