孤独な公女~私は死んだことにしてください

「執事長!」

セザールは執事室に駆けこんだ。
丁度この時間は朝礼中で執事と上級使用人達が集まっており、ポルトスが話をしている真っ最中だった。

「何事だ、セザール。この時間は大事な朝礼中、話なら後にするのだ」

ポルトスが眉を顰めた時。

「大変です! ポルトス様!」

そこへ顔面蒼白になったクララが現れ、セザールに気付いた。

「え? セザール? どうしてここに? まさか……! サフィニアのことで来たの?」

「はい、そうです。クララさんもですか?」

サフィニアの名前を聞き、ポルトスの顔色が変わる。

「何? サフィニアの話なのか?」

「はい」
「そうです」

クララとセザールが頷くと、ポルトスは集まっていた使用人達に声をかけた。

「皆、今朝の朝礼はここまでだ。全員持ち場に行って業務を始めてくれ」

集められていた使用人達は次々と部屋から出ていき、3人だけになると早速ポルトスが尋ねた。

「サフィニアが一体どうしたというのだ?」

「それが……!」

「待って下さい。先に僕に話をさせてください」

クララが言う前に、セザールが止めた。

「よし、ならセザール。話を聞こう」

「分かりました。実はサフィニアが怪我をしました。手当てを受けて今は医務室にいます」

「何だって!?」
「まぁ! サフィニアが見つかったの!?」

ポルトスとクララが同時に驚きの声を上げる。

「クララ、見つかったとはどういうことなのだ?」

クララの発言を聞いたポルトスが問い詰めた。

「はい、今朝からサフィニアの姿が見えないので今迄ずっと捜していたのです。それでも見つからなかったので、ポルトス様に報告の為伺ったのですが……セザールに保護されていたのですね? 見つかったのは良いことですが、怪我をしていたなんて……」

クララの表情が曇る。

「セザール、何故サフィニアは怪我をしたのだ? どこで見つけたのだ?」

「サフィニアは鶏小屋にいました。メイド達によって、掃除を命じられたようです」

「何だと!?」
「鶏小屋ですって!」

再びポルトスとクララが驚く。

「サフィニアからは、一言も鶏小屋の掃除を命じられたことは聞いていません。ですが、誰の差し金なのかは分かっています」

「何と言うことだ……鶏小屋の掃除が危険なことは、ここで働く者達なら誰もが知っている。フットマンが数人がかりで掃除をする決まりになっているのに……まだ何も知らない新人メイドに掃除をさせようとは……しかも、あんな幼い少女に……」

ポルトスは唇を噛んだ。

「下手をすれば怪我だけでは済まなかったかもしれません」

もし自分が鶏小屋に到着するのが遅れていたら……。
あの時の状況を思い浮かべ、セザールは背筋が寒くなった。

「それで怪我の具合はどうなのだ?」

「はい。鶏たちにつつかれた傷や転んだ時に出来た傷もありました。先生の話では暫くの間、安静にしているべきだとのことでした。ですが、サフィニアは追い出されたくないから働かせて欲しいと訴えてきました。そこでポルトス様に御相談に伺ったのです」

「……成程、そうだったのか」

ポルトスは重々しく口を開き、クララは青ざめた表情で話を聞いている。

「分かった、では今から医務室へ行こう。クララ、御苦労だった。持ち場へ戻っていいぞ。セザール、私と一緒に医務室へ行こう」

「はい、ポルトス様」

セザールは頷いた——