サフィニアを抱きかかえたセザールは医務室へ駈け込んで来た。
「すみません! 先生! 怪我人です! すぐに診て下さい!」
「え? 怪我人だって?」
主治医である初老の男性は眼鏡をクイッと上げてセザールを見つめる。
「何だ、セザールじゃないか。怪我人とは、その女の子のことかい?」
「はい、そうです」
セザールに抱きかかえられているサフィニアは青ざめた顔で医師を見上げた。
「では、そこの椅子に座らせてあげなさい」
医師が丸椅子を指さしたので、セザールはサフィニアを座らせた。
「どれ? ちょっと診てみようか? う~ん。細かいひっかき傷が沢山あるな。一体何処で怪我をしたんだい」
優しい声で医師はサフィニアに訊ねた。
「えっと……鶏小屋で怪我したの」
「何? 鶏小屋で?」
医師の眉が上がる。
「そうです。この子は1人、鶏小屋の中にいました。掃除をしようと、中に入って鶏たちに襲われたそうです」
セザールが変わりに答えた。実はここへ来るまでに何故鶏小屋にいたのか、サフィニアに聞いていたのだ。
「鶏小屋の掃除……? まさか1人でか?」
怪我の状態を確認しながら、医師は訊ねた。
「う、うん……」
サフィニアはコクリと小さく頷くと、医師はため息をついた。
「鶏小屋の掃除はね、大人の男性が数人がかりで掃除をするというのに……だから、こんなに沢山怪我をしたのだね? 鶏に襲われたなんて……さぞかし怖かっただろう?」
「うん……怖かったし、痛かった」
医師の優しい言葉にサフィニアの目に涙が浮かぶ。
その後、医師によりサフィニアの怪我の手当てが行われた。頬や手足につけられた傷は10か所以上あったが、一番怪我の状態が酷かったのは左膝の怪我だった。
酷い擦り傷で、傷口は汚れて血が滲んでいた。
そこで医師はサフィニアの傷口を綺麗に洗い、消毒液で消毒して治療をした。その間、サフィニアはグッと歯を食いしばり泣くのを必死に我慢をしていたのだった。
「はい、治療が終わったよ。それにしても偉かったね。治療中、泣いたり暴れたりもしないとは」
包帯を巻き終えた医師はサフィニアに笑顔で話しかけた。
「う、うん」
サフィニアが頷くと、医師はセザールに告げた。
「セザール。この怪我では、暫くの間安静にしておかなくては駄目だ。仕事なんてとんでもない。せめて1週間は休ませてあげなさい。大体まだ6歳の子供を働かせること自体無茶な話だ」
「そうですね……僕もこの子が働くことは反対なのですが……」
セザールが俯くと、サフィニアが突然叫んだ。
「お願い! 働かせて!」
「サフィニア?」
「どうしたのかね?」
セザールと医師が驚いてサフィニアを見つめる。
「私、ここで働かなくちゃ追い出されちゃう。もう、ママもいないし……住む場所が無くなっちゃう。沢山働くから……だから、追い出さないで? お願い!」
サフィニアは必死になってセザールに訴えた。
まだ6歳の幼い少女が、働くので追い出さないで欲しいという訴えはセザールと医師の同情を買った。
「……大丈夫、怪我をして働けない使用人を追い出すなんてことは無いよ。そんな心配はしなくていいよ?」
「本当?」
「本当だよ」
半分泣き顔のサフィニアにセザールは頷くと、医師に声をかけた。
「先生、僕が戻るまでサフィニアを預かっていただけますか?」
「あぁ、それは構わないが……どうするのだね?」
「まずは祖父にサフィニアが怪我したことを伝えに行きます。今後の事もありますんので」
「分かった。この子を預かっているから、行ってきなさい」
「お願いします」
セザールは医務室を飛びし、ポルトスの元へ急いで向かった——
「すみません! 先生! 怪我人です! すぐに診て下さい!」
「え? 怪我人だって?」
主治医である初老の男性は眼鏡をクイッと上げてセザールを見つめる。
「何だ、セザールじゃないか。怪我人とは、その女の子のことかい?」
「はい、そうです」
セザールに抱きかかえられているサフィニアは青ざめた顔で医師を見上げた。
「では、そこの椅子に座らせてあげなさい」
医師が丸椅子を指さしたので、セザールはサフィニアを座らせた。
「どれ? ちょっと診てみようか? う~ん。細かいひっかき傷が沢山あるな。一体何処で怪我をしたんだい」
優しい声で医師はサフィニアに訊ねた。
「えっと……鶏小屋で怪我したの」
「何? 鶏小屋で?」
医師の眉が上がる。
「そうです。この子は1人、鶏小屋の中にいました。掃除をしようと、中に入って鶏たちに襲われたそうです」
セザールが変わりに答えた。実はここへ来るまでに何故鶏小屋にいたのか、サフィニアに聞いていたのだ。
「鶏小屋の掃除……? まさか1人でか?」
怪我の状態を確認しながら、医師は訊ねた。
「う、うん……」
サフィニアはコクリと小さく頷くと、医師はため息をついた。
「鶏小屋の掃除はね、大人の男性が数人がかりで掃除をするというのに……だから、こんなに沢山怪我をしたのだね? 鶏に襲われたなんて……さぞかし怖かっただろう?」
「うん……怖かったし、痛かった」
医師の優しい言葉にサフィニアの目に涙が浮かぶ。
その後、医師によりサフィニアの怪我の手当てが行われた。頬や手足につけられた傷は10か所以上あったが、一番怪我の状態が酷かったのは左膝の怪我だった。
酷い擦り傷で、傷口は汚れて血が滲んでいた。
そこで医師はサフィニアの傷口を綺麗に洗い、消毒液で消毒して治療をした。その間、サフィニアはグッと歯を食いしばり泣くのを必死に我慢をしていたのだった。
「はい、治療が終わったよ。それにしても偉かったね。治療中、泣いたり暴れたりもしないとは」
包帯を巻き終えた医師はサフィニアに笑顔で話しかけた。
「う、うん」
サフィニアが頷くと、医師はセザールに告げた。
「セザール。この怪我では、暫くの間安静にしておかなくては駄目だ。仕事なんてとんでもない。せめて1週間は休ませてあげなさい。大体まだ6歳の子供を働かせること自体無茶な話だ」
「そうですね……僕もこの子が働くことは反対なのですが……」
セザールが俯くと、サフィニアが突然叫んだ。
「お願い! 働かせて!」
「サフィニア?」
「どうしたのかね?」
セザールと医師が驚いてサフィニアを見つめる。
「私、ここで働かなくちゃ追い出されちゃう。もう、ママもいないし……住む場所が無くなっちゃう。沢山働くから……だから、追い出さないで? お願い!」
サフィニアは必死になってセザールに訴えた。
まだ6歳の幼い少女が、働くので追い出さないで欲しいという訴えはセザールと医師の同情を買った。
「……大丈夫、怪我をして働けない使用人を追い出すなんてことは無いよ。そんな心配はしなくていいよ?」
「本当?」
「本当だよ」
半分泣き顔のサフィニアにセザールは頷くと、医師に声をかけた。
「先生、僕が戻るまでサフィニアを預かっていただけますか?」
「あぁ、それは構わないが……どうするのだね?」
「まずは祖父にサフィニアが怪我したことを伝えに行きます。今後の事もありますんので」
「分かった。この子を預かっているから、行ってきなさい」
「お願いします」
セザールは医務室を飛びし、ポルトスの元へ急いで向かった——



