サフィニアが鶏小屋に置き去りにされて掃除をさせられている頃——
「おかしいわね……サフィニアは何処へ行ったのかしら?」
クララは食堂でサフィニアの姿を捜し回っていた。
今朝、サフィニアを迎えに部屋に行ってみたものの、部屋の中はもぬけの殻だった。
そこで食事へ向かうメイド達の後を追って、食堂に行ったのではないかと思ってクララもここにやってきたのだ。
しかし、一向にサフィニアを見つけることが出来ずにいた。
「困ったわ……サフィニアの姿がないわね……」
すると友人のケイトが声をかけてきた。
「おはよう、クララ。食事を取りに行かないの? 早く食べないと仕事の時間に間に合わなくなるわよ?
ケイトは食事の乗ったトレーを手にしている。
「え、ええ。そうなのだけど……」
クララはチラリと料理を配っているカウンターを見ると、大勢の使用人達が並んで料理を受け取っている。
「何だか、落ち着かないわねぇ。何かあったの?」
「実は、昨日新しく入った新人メイドのサフィニアを探しているのよ」
「サフィニア? どんな子なの?」
使用人たちの仕事は忙しい。そこで新人が入ってきても皆の前で自己紹介をすることはあまり無いのだ。
仕事で顔を合わせた時に自己紹介をするのが、暗黙のルールだった。
「まだ6歳の女の子なのよ。だから心配で……」
「え!? 6歳! そんな小さな子がメイドになったの!?」
ケイトは驚き、目を見開く。
「それじゃ、心配よね。私も捜すわ!」
席を立ったケイトをクララは止めた。
「いいわよ、クララ。だってこれから食事でしょう?」
「だったら、食事が終わったらすぐに捜すの手伝うわ。小さい子なら、すぐに分かるとは思うけど、念の為にどんな外見か教えてくれる?」
「そうね。髪の色は珍しい銀髪で、宝石のような緑色の可愛らしい女の子よ」
「分かったわ、銀の髪に緑の瞳の女の子を捜せばいいのね」
「ええ、よろしくね」
クララはケイトに頼むと再び広い食堂の中を捜し回った——
****
——その頃。
セザールは部屋でポルトスと食事をしていた。
「セザール、今日もサフィニア様を頼むぞ」
「はい、分かっております。お爺様」
「今日は、サフィニア様を連れて、旧館の掃除をしに行くといい。あそこなら
サフィニア様に公爵令嬢としての最低限の教育をすることが出来るだろう。これが旧館の鍵だ」
「旧館の鍵ですか?」
ポルトスが鍵を差し出してきたので、セザールは受け取った。
「この鍵を持っているのは私だけだ。鍵を掛けてしまえば誰も入れない。暫くは旧館の掃除をすることを口実にしておけばいい。その方がお前も心置きなくサフィニア様に教えることが出来るだろう?」
「お気遣いありがとうございます。では、お爺様。サフィニア様の元へ行って参ります」
「ああ、行ってきなさい」
こうしてセザールはサフィニアの迎えに303号室へ向かった。
サフィニアが意地悪なメイド達によって怪我をしたことも。
食事も貰えず、たった一人きりで鶏小屋の掃除をさせられているとも知らず――
「おかしいわね……サフィニアは何処へ行ったのかしら?」
クララは食堂でサフィニアの姿を捜し回っていた。
今朝、サフィニアを迎えに部屋に行ってみたものの、部屋の中はもぬけの殻だった。
そこで食事へ向かうメイド達の後を追って、食堂に行ったのではないかと思ってクララもここにやってきたのだ。
しかし、一向にサフィニアを見つけることが出来ずにいた。
「困ったわ……サフィニアの姿がないわね……」
すると友人のケイトが声をかけてきた。
「おはよう、クララ。食事を取りに行かないの? 早く食べないと仕事の時間に間に合わなくなるわよ?
ケイトは食事の乗ったトレーを手にしている。
「え、ええ。そうなのだけど……」
クララはチラリと料理を配っているカウンターを見ると、大勢の使用人達が並んで料理を受け取っている。
「何だか、落ち着かないわねぇ。何かあったの?」
「実は、昨日新しく入った新人メイドのサフィニアを探しているのよ」
「サフィニア? どんな子なの?」
使用人たちの仕事は忙しい。そこで新人が入ってきても皆の前で自己紹介をすることはあまり無いのだ。
仕事で顔を合わせた時に自己紹介をするのが、暗黙のルールだった。
「まだ6歳の女の子なのよ。だから心配で……」
「え!? 6歳! そんな小さな子がメイドになったの!?」
ケイトは驚き、目を見開く。
「それじゃ、心配よね。私も捜すわ!」
席を立ったケイトをクララは止めた。
「いいわよ、クララ。だってこれから食事でしょう?」
「だったら、食事が終わったらすぐに捜すの手伝うわ。小さい子なら、すぐに分かるとは思うけど、念の為にどんな外見か教えてくれる?」
「そうね。髪の色は珍しい銀髪で、宝石のような緑色の可愛らしい女の子よ」
「分かったわ、銀の髪に緑の瞳の女の子を捜せばいいのね」
「ええ、よろしくね」
クララはケイトに頼むと再び広い食堂の中を捜し回った——
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——その頃。
セザールは部屋でポルトスと食事をしていた。
「セザール、今日もサフィニア様を頼むぞ」
「はい、分かっております。お爺様」
「今日は、サフィニア様を連れて、旧館の掃除をしに行くといい。あそこなら
サフィニア様に公爵令嬢としての最低限の教育をすることが出来るだろう。これが旧館の鍵だ」
「旧館の鍵ですか?」
ポルトスが鍵を差し出してきたので、セザールは受け取った。
「この鍵を持っているのは私だけだ。鍵を掛けてしまえば誰も入れない。暫くは旧館の掃除をすることを口実にしておけばいい。その方がお前も心置きなくサフィニア様に教えることが出来るだろう?」
「お気遣いありがとうございます。では、お爺様。サフィニア様の元へ行って参ります」
「ああ、行ってきなさい」
こうしてセザールはサフィニアの迎えに303号室へ向かった。
サフィニアが意地悪なメイド達によって怪我をしたことも。
食事も貰えず、たった一人きりで鶏小屋の掃除をさせられているとも知らず――



