「それじゃあね、おやすみなさい。サフィニア」
部屋の前まで送ってくれたクララがサフィニアの頭を撫でた。
「う、うん……おやすみなさい」
サフィニアはじっとクララを見上げる。
「明日から、私たちは 6時に起きないといけないから今夜は早く寝るのよ?」
「……うん」
コクリと頷くサフィニア。
「それじゃ、良い夢を見てね」
クララは笑顔でサフィニアに手を振ると、去って行った。
——パタン
サフィニアは部屋の扉を閉めると、部屋を見渡した。
生活に必要な最低限だけの家具に、一つだけの窓。昨日までサフィニアが暮らしていた部屋とはまるで様相が異なる。
「何にもない部屋……」
ポツリと呟くサフィニア。
何より大好きな母が、もういないのだ。サフィニアはベッドに置かれたクマのぬいぐるみを手に取るとギュッと抱きしめた。
「クマちゃん……一緒に寝よう?」
サフィニアは唯一灯されていたランプの灯を吹き消すと、途端に部屋の中は暗くなる。
クマのぬいぐるみを左手で抱きしめたまま、キルトをめくるとサフィニアはベッドにもぐりこんだ。
「……ママ。おやすみなさい」
もうこの世にはいない、大好きな母に語りかけるとサフィニアは目を閉じた。
本当は1人で寝るのは怖かったけれども、もう一緒に眠ってくれる人は誰もいない。これからサフィニアはずっと1人なのだ。
「ママ……1人は寂しいよ……」
クマのぬいぐるみを抱きしめながら、目を閉じて震えるサフィニア。
とても眠れるとは思えなかったが……1日の疲れが出たのだろう。やがて小さな寝息が静かな部屋に聞こえてきたのだった――
****
真夜中――
目を閉じているサフィニアの口から、苦し気な呻き声が洩れている。
「う……」
サフィニアは夢を見ていたのだ。
誰かに追いかけられ、何も見えない霧の中を必死で逃げている怖い夢だった。
『やだ……怖い……! 誰か…! ママ……助けて……!』
「ママッ! 怖いよ!」
サフィニアは叫び……自分の声で目が覚めた。
周りを見渡すと部屋の中は真っ暗で、狭い部屋はシンと静まり返っている。
「ママ……? ここ、どこ……?」
その時になってサフィニアは思い出した。母親を亡くし、葬儀が終わる前に無理やり連れて来られてメイドとして働かなければならなくなった事実を。
(そうだ……もう、ママは死んじゃったんだ……)
「ママ……」
怖くて、寂しくて悲しくて……とうとう、握りしめるキルトにの上にサフィニアの涙がポタポタと落ちていく。
「う……グスッ……うっ……」
(駄目……泣いたら駄目なのに。ママが神様の所へ行けないのに……)
泣いている顔を神様に見られないように、泣き声が外に漏れないようにサフィニアはピロウに顔をうずめた。
「グスッ……ヒック……ママ……怖いよぉ……寂しいよ……」
それは、まだたった6歳の少女が受け止めるには、あまりにも残酷な世界だった。
サフィニアはピロウに顔をうずめたまま、肩を震わせいつまでもいつまでも泣き続ける。
サフィニアが泣いている姿を知る者は誰もいない。
ただ夜空に浮かぶ満月だけが……泣いているサフィニアの姿を青白く照らすばかりだった――
部屋の前まで送ってくれたクララがサフィニアの頭を撫でた。
「う、うん……おやすみなさい」
サフィニアはじっとクララを見上げる。
「明日から、私たちは 6時に起きないといけないから今夜は早く寝るのよ?」
「……うん」
コクリと頷くサフィニア。
「それじゃ、良い夢を見てね」
クララは笑顔でサフィニアに手を振ると、去って行った。
——パタン
サフィニアは部屋の扉を閉めると、部屋を見渡した。
生活に必要な最低限だけの家具に、一つだけの窓。昨日までサフィニアが暮らしていた部屋とはまるで様相が異なる。
「何にもない部屋……」
ポツリと呟くサフィニア。
何より大好きな母が、もういないのだ。サフィニアはベッドに置かれたクマのぬいぐるみを手に取るとギュッと抱きしめた。
「クマちゃん……一緒に寝よう?」
サフィニアは唯一灯されていたランプの灯を吹き消すと、途端に部屋の中は暗くなる。
クマのぬいぐるみを左手で抱きしめたまま、キルトをめくるとサフィニアはベッドにもぐりこんだ。
「……ママ。おやすみなさい」
もうこの世にはいない、大好きな母に語りかけるとサフィニアは目を閉じた。
本当は1人で寝るのは怖かったけれども、もう一緒に眠ってくれる人は誰もいない。これからサフィニアはずっと1人なのだ。
「ママ……1人は寂しいよ……」
クマのぬいぐるみを抱きしめながら、目を閉じて震えるサフィニア。
とても眠れるとは思えなかったが……1日の疲れが出たのだろう。やがて小さな寝息が静かな部屋に聞こえてきたのだった――
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真夜中――
目を閉じているサフィニアの口から、苦し気な呻き声が洩れている。
「う……」
サフィニアは夢を見ていたのだ。
誰かに追いかけられ、何も見えない霧の中を必死で逃げている怖い夢だった。
『やだ……怖い……! 誰か…! ママ……助けて……!』
「ママッ! 怖いよ!」
サフィニアは叫び……自分の声で目が覚めた。
周りを見渡すと部屋の中は真っ暗で、狭い部屋はシンと静まり返っている。
「ママ……? ここ、どこ……?」
その時になってサフィニアは思い出した。母親を亡くし、葬儀が終わる前に無理やり連れて来られてメイドとして働かなければならなくなった事実を。
(そうだ……もう、ママは死んじゃったんだ……)
「ママ……」
怖くて、寂しくて悲しくて……とうとう、握りしめるキルトにの上にサフィニアの涙がポタポタと落ちていく。
「う……グスッ……うっ……」
(駄目……泣いたら駄目なのに。ママが神様の所へ行けないのに……)
泣いている顔を神様に見られないように、泣き声が外に漏れないようにサフィニアはピロウに顔をうずめた。
「グスッ……ヒック……ママ……怖いよぉ……寂しいよ……」
それは、まだたった6歳の少女が受け止めるには、あまりにも残酷な世界だった。
サフィニアはピロウに顔をうずめたまま、肩を震わせいつまでもいつまでも泣き続ける。
サフィニアが泣いている姿を知る者は誰もいない。
ただ夜空に浮かぶ満月だけが……泣いているサフィニアの姿を青白く照らすばかりだった――



