——19時過ぎ
サフィニアのテーブルマナーを兼ねた夕食が終わった。
「夕食はどうでしたか? サフィニア様」
ポルトスが笑顔で尋ねる。
「はい、とってもおいしかった! ……です」
言葉遣いのことを思いだしたサフィニアは慌てて言い直した。
「……料理のことですね? お口に合ったようで何よりでした。それで、テーブルマナーの方はどうでしたか? 難しかったですか?」
「えぇと……テーブルマナーのこと、もっとお勉強しようって思いました」
するとセザールが会話に加わってきた。
「でもサフィニア様は賢いですよ。文字もすぐに覚えられましたし、フォークとナイフの取り方や、使い方も最後の方は全てお1人で出来たのですから」
「そう? ありがとう、セザール」
嬉しそうに笑うサフィニアを見て、ポルトスはローズのことを思い出した。
元は捨て子で孤児院育ちのローズは13歳で施設を出てエストマン公爵家に下級メイドとして住み込みで働くことになったのだ。
サフィニアの母、ローズは下級メイドで学問の知識は全く無かった。けれども頭は非常に良かったのだ。
記憶力が抜群で、人の顔も仕事も一度で完璧に覚えることが出来たのでポルトスは高く評価していた。
恐らくローズなら上級メイドとして働いても、誰よりも優れたメイドになれただろう。
しかし、この屋敷で上級メイドになれるのは行儀見習いの為に奉公している女性。、もしくは正式な紹介状を持つ女性しか上級メイドになれない、厳しい決まりがあったのだ。
当然、孤児院育ちのローズが上級メイドになれるはず等、無かった。
(ローズは非常に利発なメイドだった。サフィニア様もきっと、賢さを受け継いだに違いない。この分なら……)
そこでポルトスはサフィニアに声をかけた。
「サフィニア様、明日夕食を召し上がる際、きちんとテーブルマナーを覚えているかテストを行いましょう」
「え……? テスト……?」
テストと聞いて、サフィニアは顔をしかめる。
「はい、テストです。難しいかもしれませんが、テストに合格したら御褒美をあげましょう」
「え? 本当? 私、頑張る!」
御褒美と聞いた途端、サフィニアは笑顔になる。
「頑張ってくださね。それでは、そろそろお部屋に戻った方が良いでしょう。セザール」
ポルトスはセザールに視線を移した。
「はい、お爺様」
「サフィニア様をお部屋までお連れして差し上げなさい」
「分かりました。それではサフィニア様、参りましょう」
サフィニアに手を伸ばすセザール。
「うん、又ね。ポルトスさん」
セザールと手を繋ぐと、サフィニアは手を振った。
「はい、お休みなさいませ。サフィニア様」
深々と会釈するポルトス。
こうして、サフィニアはポルトスに見送られて部屋を後にした——
****
セザールとポルトスが暮らす部屋は東棟の4階にあり、男性用宿舎となっていた。
サフィニアが暮らす女子寮は3階にある。
2人で階段を目指し、手を繋いで廊下を歩いていると数人の男性使用人達に出会った。
彼らは足を止めると、話しかけてきた。
「よぉ、セザール。その子はどうしたんだ?」
「お前に妹なんかいたっけ?」
「ひょっとして、その子もメイドなのか?」
先程の怖い思いが蘇ったサフィニアは怯えて、セザールの手を強く握る。
サフィニアが怯えていることに気付いたセザール。サフィニアを隠すように使用人達に対面した。
「この子は、サフィニアで年齢は6歳です。母親を亡くしたばかりで、行き場が無いので今日からここのメイドとして働くことになりました。僕がお世話係になったので、今から部屋に連れて行くところです。それじゃ、行こうか。サフィニア」
セザールは一気に説明すると、サフィニアを連れてその場を去った——
サフィニアのテーブルマナーを兼ねた夕食が終わった。
「夕食はどうでしたか? サフィニア様」
ポルトスが笑顔で尋ねる。
「はい、とってもおいしかった! ……です」
言葉遣いのことを思いだしたサフィニアは慌てて言い直した。
「……料理のことですね? お口に合ったようで何よりでした。それで、テーブルマナーの方はどうでしたか? 難しかったですか?」
「えぇと……テーブルマナーのこと、もっとお勉強しようって思いました」
するとセザールが会話に加わってきた。
「でもサフィニア様は賢いですよ。文字もすぐに覚えられましたし、フォークとナイフの取り方や、使い方も最後の方は全てお1人で出来たのですから」
「そう? ありがとう、セザール」
嬉しそうに笑うサフィニアを見て、ポルトスはローズのことを思い出した。
元は捨て子で孤児院育ちのローズは13歳で施設を出てエストマン公爵家に下級メイドとして住み込みで働くことになったのだ。
サフィニアの母、ローズは下級メイドで学問の知識は全く無かった。けれども頭は非常に良かったのだ。
記憶力が抜群で、人の顔も仕事も一度で完璧に覚えることが出来たのでポルトスは高く評価していた。
恐らくローズなら上級メイドとして働いても、誰よりも優れたメイドになれただろう。
しかし、この屋敷で上級メイドになれるのは行儀見習いの為に奉公している女性。、もしくは正式な紹介状を持つ女性しか上級メイドになれない、厳しい決まりがあったのだ。
当然、孤児院育ちのローズが上級メイドになれるはず等、無かった。
(ローズは非常に利発なメイドだった。サフィニア様もきっと、賢さを受け継いだに違いない。この分なら……)
そこでポルトスはサフィニアに声をかけた。
「サフィニア様、明日夕食を召し上がる際、きちんとテーブルマナーを覚えているかテストを行いましょう」
「え……? テスト……?」
テストと聞いて、サフィニアは顔をしかめる。
「はい、テストです。難しいかもしれませんが、テストに合格したら御褒美をあげましょう」
「え? 本当? 私、頑張る!」
御褒美と聞いた途端、サフィニアは笑顔になる。
「頑張ってくださね。それでは、そろそろお部屋に戻った方が良いでしょう。セザール」
ポルトスはセザールに視線を移した。
「はい、お爺様」
「サフィニア様をお部屋までお連れして差し上げなさい」
「分かりました。それではサフィニア様、参りましょう」
サフィニアに手を伸ばすセザール。
「うん、又ね。ポルトスさん」
セザールと手を繋ぐと、サフィニアは手を振った。
「はい、お休みなさいませ。サフィニア様」
深々と会釈するポルトス。
こうして、サフィニアはポルトスに見送られて部屋を後にした——
****
セザールとポルトスが暮らす部屋は東棟の4階にあり、男性用宿舎となっていた。
サフィニアが暮らす女子寮は3階にある。
2人で階段を目指し、手を繋いで廊下を歩いていると数人の男性使用人達に出会った。
彼らは足を止めると、話しかけてきた。
「よぉ、セザール。その子はどうしたんだ?」
「お前に妹なんかいたっけ?」
「ひょっとして、その子もメイドなのか?」
先程の怖い思いが蘇ったサフィニアは怯えて、セザールの手を強く握る。
サフィニアが怯えていることに気付いたセザール。サフィニアを隠すように使用人達に対面した。
「この子は、サフィニアで年齢は6歳です。母親を亡くしたばかりで、行き場が無いので今日からここのメイドとして働くことになりました。僕がお世話係になったので、今から部屋に連れて行くところです。それじゃ、行こうか。サフィニア」
セザールは一気に説明すると、サフィニアを連れてその場を去った——



