セザールはサフィニアを連れて、厨房を訪れた。
大勢の料理人達が働いているということもあり、セザールは言葉遣いを改めてサフィニアに話しかけた。
「サフィニア、ここが厨房だよ」
サフィニアは目の前の光景を見て、目を見開いた。
広々とした厨房では大勢の料理人達が忙しそうにフライパンをゆすったり、鍋に香辛料を振り入れたり……それらの姿をサフィニアは感心した様子で見つめている。
「うわぁ~沢山の人が働いているね。それに美味しそうな匂いがする」
「うん、そうだね……あ、あの人におやつを貰えないか、聞いてみよう」
辺りをキョロキョロ見渡していたセザールは、椅子に座ってトウモロコシの皮を剥いている青年に目を付けた。
「どうしたの? セザール」
サフィニアはセザールを見上げると、右手を繋がれた。
「サフィニア、行くよ」
セザールはサフィニアの手を引いて、料理人に近付くと声をかけた。
「こんにちは、チャドさん」
「え?」
声をかけられた人物は顔を上げて、セザールを見上げた。
「なんだ、誰かと思えばセザールじゃないか。厨房に来るなんて珍しいな……うん? その子は誰だい?」
チャドと呼ばれた人物は、サフィニアに気付いて首を傾げる。
「この子はサフィニアと言って、今日からこの屋敷でメイドとして働くことになった子です」
「何だって? こんな小さな子供が!? 一体何歳なんだよ!」
チャドは驚いて、サフィニアをじっと見つめる。
「こんにちは。私……6歳です」
ポルトスから教えて貰った挨拶方法を思い出し、サフィニアはペコリと頭を下げる。
「何だって? まだ、たった6歳なのか? 一番チビなトムだって10歳なのに! そうか……それでセザールがこの子に付き添ってやってるんだな?」
「はい、そういうことです」
笑顔で頷くセザール。
「う~ん……この子に何か仕事をさせるつもりで連れてきたのか? だが、ここは厨房だ。まだそこのおチビさんが出来るような仕事はないぞ?」
「いえ、仕事をさせる為に連れてきたわけではありません。実は、サフィニアに何かおやつを貰えないかと思ってここへ来たのです」
「え? おやつだって!? だがなぁ……セザールなら知っているだろう? 下級使用人にはおやつをあげられないって」
小声になるチャド。
使用人達の仕事は、肉体的にきつい。朝昼晩と食事は出るものの、仕事が忙しい為に、小腹がすく使用人達も大勢いる。
だが上級使用人達のみ、中間食を貰えることになっている。そこで使用人達は上級使用人になれるよう必死に働いているのだった。
「勿論分かっています。だけど、サフィニアは今日母親の葬儀の最中にこの屋敷に連れて来られて、食事もとっていないんです。お願いします。どうかサフィニアに何か食べ物を与えてください」
「よ、よせ! やめろって、そんなことするの……」
チャドはトウモロコシの皮を剥きながら、周囲を見渡した。今は誰もが忙しそうに働いている為、こちらを気に留める料理人達は1人もいない。
「わ、分かったよ。ほら、これを持っていきな」
チャドは近くに置かれたリンゴを二つ手に取ると、セザールに素早く渡した。
「どうもありがとうございます、チャドさん」
「誰にも見られないように持っていくんだぞ?」
「はい、勿論です」
セザールは素早くリンゴをポケットにしまうと、サフィニアに声をかけた。
「それじゃ行こうか。サフィニア」
「う、うん。ありがとう、お兄ちゃん」
チャドにお礼を言うサフィニア。
「お兄ちゃん、かよ。何か妙な感じだが……チビ、仕事頑張れよ」
笑顔のチャドに見送られながら、セザールとサフィニアは厨房を後にした——
大勢の料理人達が働いているということもあり、セザールは言葉遣いを改めてサフィニアに話しかけた。
「サフィニア、ここが厨房だよ」
サフィニアは目の前の光景を見て、目を見開いた。
広々とした厨房では大勢の料理人達が忙しそうにフライパンをゆすったり、鍋に香辛料を振り入れたり……それらの姿をサフィニアは感心した様子で見つめている。
「うわぁ~沢山の人が働いているね。それに美味しそうな匂いがする」
「うん、そうだね……あ、あの人におやつを貰えないか、聞いてみよう」
辺りをキョロキョロ見渡していたセザールは、椅子に座ってトウモロコシの皮を剥いている青年に目を付けた。
「どうしたの? セザール」
サフィニアはセザールを見上げると、右手を繋がれた。
「サフィニア、行くよ」
セザールはサフィニアの手を引いて、料理人に近付くと声をかけた。
「こんにちは、チャドさん」
「え?」
声をかけられた人物は顔を上げて、セザールを見上げた。
「なんだ、誰かと思えばセザールじゃないか。厨房に来るなんて珍しいな……うん? その子は誰だい?」
チャドと呼ばれた人物は、サフィニアに気付いて首を傾げる。
「この子はサフィニアと言って、今日からこの屋敷でメイドとして働くことになった子です」
「何だって? こんな小さな子供が!? 一体何歳なんだよ!」
チャドは驚いて、サフィニアをじっと見つめる。
「こんにちは。私……6歳です」
ポルトスから教えて貰った挨拶方法を思い出し、サフィニアはペコリと頭を下げる。
「何だって? まだ、たった6歳なのか? 一番チビなトムだって10歳なのに! そうか……それでセザールがこの子に付き添ってやってるんだな?」
「はい、そういうことです」
笑顔で頷くセザール。
「う~ん……この子に何か仕事をさせるつもりで連れてきたのか? だが、ここは厨房だ。まだそこのおチビさんが出来るような仕事はないぞ?」
「いえ、仕事をさせる為に連れてきたわけではありません。実は、サフィニアに何かおやつを貰えないかと思ってここへ来たのです」
「え? おやつだって!? だがなぁ……セザールなら知っているだろう? 下級使用人にはおやつをあげられないって」
小声になるチャド。
使用人達の仕事は、肉体的にきつい。朝昼晩と食事は出るものの、仕事が忙しい為に、小腹がすく使用人達も大勢いる。
だが上級使用人達のみ、中間食を貰えることになっている。そこで使用人達は上級使用人になれるよう必死に働いているのだった。
「勿論分かっています。だけど、サフィニアは今日母親の葬儀の最中にこの屋敷に連れて来られて、食事もとっていないんです。お願いします。どうかサフィニアに何か食べ物を与えてください」
「よ、よせ! やめろって、そんなことするの……」
チャドはトウモロコシの皮を剥きながら、周囲を見渡した。今は誰もが忙しそうに働いている為、こちらを気に留める料理人達は1人もいない。
「わ、分かったよ。ほら、これを持っていきな」
チャドは近くに置かれたリンゴを二つ手に取ると、セザールに素早く渡した。
「どうもありがとうございます、チャドさん」
「誰にも見られないように持っていくんだぞ?」
「はい、勿論です」
セザールは素早くリンゴをポケットにしまうと、サフィニアに声をかけた。
「それじゃ行こうか。サフィニア」
「う、うん。ありがとう、お兄ちゃん」
チャドにお礼を言うサフィニア。
「お兄ちゃん、かよ。何か妙な感じだが……チビ、仕事頑張れよ」
笑顔のチャドに見送られながら、セザールとサフィニアは厨房を後にした——



