衣裳部屋は東棟の一番奥にあった。
「ここが衣裳部屋よ。覚えておきなさい」
「はい」
クララに言われ、返事をするサフィニア。
中へ入ると大きな棚がズラリと並べられ、棚の上には畳まれたメイド服が積まれている。
「確か一番小さいサイズはこの棚だったかしら?」
クララは窓際の棚の前にやって来ると、しゃがんで一番下段の棚から黒いワンピースとエプロンを取り出してサフィニアを手招きした。
「サフィニア、こっちへいらっしゃい」
「はい」
呼ばれて近くに行くと、メイド服を手渡された。
「これが一番小さいサイズのはずよ。着替えてみて。1人で着替えられるかしら?」
クララは心配そうに尋ねるが、サフィニアは身体の弱いローズとずっと2人で暮らしてきたのだ。ローズの負担にならないように、出来るだけ自分のことは出来るように努力してきた。
「着替えられ……ます」
「そう? それじゃ着替えてみて?」
クララに促され、サフィニアは早速着替えを始めた。
喪服を脱いでワンピースを着たところまでは出来たが、エプロンの紐を結ぶことが出来ない。
困って、もたもたしているとクララがクスリと笑った。
「サフィニア、出来ない物は無理に頑張ろうとしなくていいのよ? 紐が結べないのでしょう?」
「……はい」
コクリと小さく頷く。
「確かに紐を結ぶのは大変かもしれないわね。私が手伝ってあげるわ」
クララはサフィニアの背後に回ると、エプロンの紐を結んであげた。
「はい、これで大丈夫よ」
「あ、ありがとう……」
小さくお礼を述べるサフィニアをクララは見つめる。
「う~ん……やっぱり、かなりサイズが合わないわね……でも仕方ないわね。今迄このお屋敷にはサフィニアほど小さな子がメイドとして入って来たことはないから。エプロンだけならまだ何とかなるけど。でも、サフィニアは服も持ってきていないのよね?」
「はい」
何しろ、ローズの葬儀の最中に否応なしにここへ連れて来られてしまったのだ。服など持ってこれるはずも無い。
「今は袖をまくってしのぐしか無いわね。ポルトス様にサフィニアのメイド服のことは相談しないと。とりあえずサフィニアの部屋に戻りましょう。行くわよ」
「はい」
再び、クララに連れられてサフィニアは303号室に戻ることになった。
部屋に戻る途中もメイド達にすれ違い、彼女たちは一様に好奇の目をサフィニアに向けてきた。けれどクララの説明のお陰で、メイド達はサフィニアにちょっかいを出す者は1人もいなかった——
303号室に戻ってくると、クララが言った。
「サフィニア、仕事がたまっているから私はもう行くわね。後のことは、多分ポルトス様が何とかして下さると思うわ。私の部屋は310号室にあるから、何か困ったことがあったら部屋にいらっしゃい。もっとも私が部屋に戻れるのは19時を過ぎてしまうけれど。それじゃあね」
クララはサフィニアに手を振ると、慌ただしく部屋を出て行った。
1人静かな部屋に残されたサフィニアはどうすれば良いか分からず、立ち尽くしていると再びローズのことが思い出されてきた。
「ママ……会いたいよぉ……寂しいよ……」
サフィニアはベッドに置いたぬいぐるみを抱きしめながら、床に座って必死に涙を堪えていた。
そのとき。
——コンコン
扉がノックされた。
けれどサフィニアはどうすれば良いのか分からず、ぬいぐるみを抱きしめたまま俯いていた。
——コンコン
すると再びノック音が響いた。
それでもサフィニアは返事をしないでいると、扉の外で声が聞こえてきた。
『おかしいなぁ……? お爺様から、この部屋だと聞かされていたのに……入りますよ』
カチャリと音を立てて扉が開かれると、少年がサフィニアの部屋に現れた——
「ここが衣裳部屋よ。覚えておきなさい」
「はい」
クララに言われ、返事をするサフィニア。
中へ入ると大きな棚がズラリと並べられ、棚の上には畳まれたメイド服が積まれている。
「確か一番小さいサイズはこの棚だったかしら?」
クララは窓際の棚の前にやって来ると、しゃがんで一番下段の棚から黒いワンピースとエプロンを取り出してサフィニアを手招きした。
「サフィニア、こっちへいらっしゃい」
「はい」
呼ばれて近くに行くと、メイド服を手渡された。
「これが一番小さいサイズのはずよ。着替えてみて。1人で着替えられるかしら?」
クララは心配そうに尋ねるが、サフィニアは身体の弱いローズとずっと2人で暮らしてきたのだ。ローズの負担にならないように、出来るだけ自分のことは出来るように努力してきた。
「着替えられ……ます」
「そう? それじゃ着替えてみて?」
クララに促され、サフィニアは早速着替えを始めた。
喪服を脱いでワンピースを着たところまでは出来たが、エプロンの紐を結ぶことが出来ない。
困って、もたもたしているとクララがクスリと笑った。
「サフィニア、出来ない物は無理に頑張ろうとしなくていいのよ? 紐が結べないのでしょう?」
「……はい」
コクリと小さく頷く。
「確かに紐を結ぶのは大変かもしれないわね。私が手伝ってあげるわ」
クララはサフィニアの背後に回ると、エプロンの紐を結んであげた。
「はい、これで大丈夫よ」
「あ、ありがとう……」
小さくお礼を述べるサフィニアをクララは見つめる。
「う~ん……やっぱり、かなりサイズが合わないわね……でも仕方ないわね。今迄このお屋敷にはサフィニアほど小さな子がメイドとして入って来たことはないから。エプロンだけならまだ何とかなるけど。でも、サフィニアは服も持ってきていないのよね?」
「はい」
何しろ、ローズの葬儀の最中に否応なしにここへ連れて来られてしまったのだ。服など持ってこれるはずも無い。
「今は袖をまくってしのぐしか無いわね。ポルトス様にサフィニアのメイド服のことは相談しないと。とりあえずサフィニアの部屋に戻りましょう。行くわよ」
「はい」
再び、クララに連れられてサフィニアは303号室に戻ることになった。
部屋に戻る途中もメイド達にすれ違い、彼女たちは一様に好奇の目をサフィニアに向けてきた。けれどクララの説明のお陰で、メイド達はサフィニアにちょっかいを出す者は1人もいなかった——
303号室に戻ってくると、クララが言った。
「サフィニア、仕事がたまっているから私はもう行くわね。後のことは、多分ポルトス様が何とかして下さると思うわ。私の部屋は310号室にあるから、何か困ったことがあったら部屋にいらっしゃい。もっとも私が部屋に戻れるのは19時を過ぎてしまうけれど。それじゃあね」
クララはサフィニアに手を振ると、慌ただしく部屋を出て行った。
1人静かな部屋に残されたサフィニアはどうすれば良いか分からず、立ち尽くしていると再びローズのことが思い出されてきた。
「ママ……会いたいよぉ……寂しいよ……」
サフィニアはベッドに置いたぬいぐるみを抱きしめながら、床に座って必死に涙を堪えていた。
そのとき。
——コンコン
扉がノックされた。
けれどサフィニアはどうすれば良いのか分からず、ぬいぐるみを抱きしめたまま俯いていた。
——コンコン
すると再びノック音が響いた。
それでもサフィニアは返事をしないでいると、扉の外で声が聞こえてきた。
『おかしいなぁ……? お爺様から、この部屋だと聞かされていたのに……入りますよ』
カチャリと音を立てて扉が開かれると、少年がサフィニアの部屋に現れた——



