お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

橘は少し目を伏せるようにして黙ったまま、ベッドサイドにある椅子をゆっくりと引き寄せ、紗良の隣に腰を下ろした。
動きに無駄がなく静かで、まるで彼自身が紗良の不安を刺激しないようにと配慮しているかのようだった。

至近距離に橘の気配を感じると、紗良は思わず彼を見た。
冷静さの奥にある静かな誠実さが、なぜか胸に沁みた。

そのままじっと橘を見つめる紗良の視線に気づき、橘もゆっくりと目を向ける。
しばしの沈黙のあと、橘はまっすぐ紗良を見た。
その目には、動揺でも、照れでもなく、任務を越えた何かを受け止めようとする誠実さがあった。

「ありがとうございます。その言葉で……だいぶ報われます」

そう言って、橘はふっと微笑んだ。
紗良は、ふいに頬を染め、目を逸らす。
でも次の瞬間にはまた橘の方を見て——今度はじっと、穴が開くほどに見つめた。

「な、なんでしょうか……?」

椅子の背に落ち着いて座っていた橘が、さすがにやや戸惑ったように言う。

紗良は、小さく首をかしげてこう返した。

「……橘さんって、もしかして……モンスターですか?」

橘は一瞬、きょとんとした顔をした後、珍しく小さく笑った。

「どうしてですか?」

「だって……こんな状況でも、淡々としてて、完璧で、全然疲れて見えなくて……。
人間なら、もうとっくに限界じゃないとおかしいのに」

橘はその言葉に少しだけ目を伏せたあと、静かに言った。

「僕は訓練されていますから。……それに、護ると決めた人を前に、弱音は吐けません」

その言葉が、胸に静かに落ちてきた。

紗良はもう一度彼を見た。今度は、まるで答え合わせをするように、少しだけ真剣な目で。