お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

椅子に腰を下ろした紗良に、橘が静かに声をかけた。

「横にならなくても、大丈夫ですか?」

その声音には、気遣いと、ほんのわずかな痛みが滲んでいた。
紗良が顔を上げると、いつの間にか橘の隣には旗野の姿もあった。彼の表情は硬く、職務中の顔に戻っている。

「本当は入院するほどでもないですから。平気です」
微笑みを添えて言ったつもりだったが、橘の顔には明確な陰が差した。

「申し訳ありません。自宅までの安全が確保できる手筈が整いませんでした」

その言葉には、個人としての責任感がにじんでいた。
紗良はすぐに首を振る。

「いえ、そういうつもりで言ったんじゃないんです」

橘はそれに応えるように、静かに小さくうなずいた。
そして、姿勢を正すと、冷静な語調で続けた。

「警護のリスク管理のランクを一段階上げました。
今後、送迎の際には運転手を常駐させ、車は建物の出入口にできるだけ近づけます。
徒歩での移動距離を極力減らし、ドアからドアへの完全な警護体制を取ります」

その一つ一つの言葉に、責任者としての強い決意が込められていた。

「この度は危険を予測できず、申し訳ありませんでした」

そう締めくくると、橘と旗野は同時に、深々と頭を下げた。

あの一瞬の混乱と恐怖のなかで、守ってくれた人たちが、今こうして頭を下げている——
紗良は胸の奥に、言葉にできない温かさと申し訳なさが交錯するのを感じた。