お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

冷たい床の感触が、紗良の意識を現実に引き戻す。
身体は震え、心臓は依然として激しく鼓動を打つが、時間だけが異常に遅く感じられた。

周囲の人々の動きが、まるで遠くから見ているかのようにぼんやりとしか見えない。
目の前の現実が、どこか遠くの出来事のように感じる。

そのとき、遠くから聞こえてきた叫び声が紗良の耳を捉えた。

「お前らのせいで、俺の親父は死んだ!絶対に許さない!」

その声には激しい怒りと憎しみが込められていたが、次の瞬間、その叫びはパトカーのサイレンの音にかき消されていく。
サイレンの音だけが、紗良の耳の中で鳴り響く。
心の中でその声が反響し、紗良はその恐ろしい言葉が頭に残った。

足元に目を向けると、片方の靴がないことに気がついた。
辺りを見回すが、靴はどこにも見当たらない。
退避するとき、足元が不安定でその場に落としてしまったのだろうか。
その現実を受け入れる余裕が少しだけ戻ってきた。
けれども、足元が裸足になっていることが、また一つの不安を呼び起こす。

再び、体に意識が向けられる。
点滴で少しは楽になったと思っていた胸のひりつきと呼吸の苦しさが、突然戻ってきていた。
心臓の拍動が再び早くなり、息がうまく吸えない。
頭を壁に預けて目を閉じ、無意識に深呼吸を試みるが、体の中で絡みついた不安と恐怖がその呼吸を重くさせる。