お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

紗良は背中の壁に寄りかかりながら、橘にしがみつくように必死に立っていた。
その瞬間、すべてが現実感を失っていくかのように感じた。
足元がふらつき、心拍数がどんどんと上がっていく。それでも必死に体勢を保とうとするが、無意識に震える手足が、彼女の力を奪っていく。

次第に足元がふらつき、どうにも耐えられなくなった。
ズルズルと、まるで何かに引き寄せられるように、床に座り込んでしまう。

心臓の鼓動が耳に響き、まるで体全体が震えているような感覚に包まれる。
呼吸は荒く、声を出すことすらできない。
ただただ、目の前にある現実が迫るように感じ、思考が鈍くなっていく。

ふと、手に感じていた温もりが消えた瞬間、不安が一気に押し寄せる。
橘の手首に付いているマイクを通じて、彼が周囲の状況を冷静に伝え始めるのがわかった。
それでも、紗良の頭の中ではその言葉が一つも届かない。

視線を上げると、橘が自分と周囲を交互に見渡しながら、素早く動いている。
その姿を見上げる度に、彼がどれほど冷静に動いているのかはわかるが、
紗良はただその場に座り込むだけで、
心の中では不安と恐怖がますます大きくなっていった。

どうしてこんなにも怖いのか。
どうして自分はこんなにも無力なのか。
その問いが頭の中をぐるぐると回り、体が震えるのを止めることができなかった。