お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

ベッドに横たわり、扉のほうへと自然と足を向ける体勢になる。
視線を上げると、そこには扉近くに立っていた橘の姿があり、ふと目が合った。
瞬間、紗良の胸がきゅっと締めつけられるような感覚になる。
その刹那、医師がやわらかく声をかけた。

「胸の音を聞かせてくださいね」

その言葉に、紗良は反射的に体をこわばらせる。
手が無意識に服の裾を握り締め、ためらいの気配が全身に滲んだ。

――そのときだった。

橘は、何の躊躇もなく、しかし慌てることもなく、静かに身体を反転させた。
表情を変えることなく、紗良に完全に背を向け、壁の方へ視線を向ける。

その仕草は何も語らずとも、「見ない」という強い意志が伝わるほどに明確で、誠実だった。

その空気を察したのか、医師も看護師たちも柔らかな雰囲気のまま、静かに診察を続けた。
誰も急かさず、誰も戸惑わせず――まるでそこにいた全員が、紗良のために空気を整えているようだった。

紗良は服の裾を握る手の力を少しだけ抜き、小さく息を吐く。
耳元では聴診器の冷たい感触と、鼓動を聞く医師の真剣な気配が重なっていた。