お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

やがて、控えめなノック音が室内に響く。
橘が静かに「どうぞ」と返すと、白衣を着た医師が入室してきた。

無駄のない動きで手を消毒しながら、医師は紗良の正面にしゃがみ、穏やかな口調で話しかける。

「熱が高いようですね。喉の痛みや咳はありますか? 頭痛や寒気は?」

紗良は、少し遅れてうなずきながら、かすれた声で答える。
「咳と……少し、頭も……ぼーっとしてて」

医師は一つひとつ頷きながら、記録を取った後、
「少しだけ触れますね」と前置きをしてから、首元へ手を伸ばした。

その手はひんやりとしていて、高熱に焼かれた紗良の肌には驚くほど心地よく感じられた。紗良は思わず目を閉じる。

――その次の瞬間。

視界がふわりと傾き、身体が大きく揺れた。
「支えて」と短く冷静な声が響き、即座に看護師が紗良の身体をがっちりと両手で受け止める。

医師はすぐに紗良の脈を再確認し、顔をあげる。

「ふらつきが強いですね。横になって、診察を続けましょう」

もう一人の看護師がすばやくベッドへと向かい、白いシーツを引き直し、枕の位置を丁寧に整える。
支えていた看護師は、椅子に座ったままの紗良を注意深く立ち上がらせ、言葉をかけながらゆっくりとベッドへ導いた。

ベッドに横になると、薄く汗ばんだ額に冷たい空気が当たる。
見慣れない個室の天井を見つめながら、紗良は遠のく意識の中で、誰かの気配が近くにいる安心感を、かすかに感じていた。