お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

紗良は一瞬の沈黙のあと、小さく息を吸い込んで言った。

「……いえ、その、お気持ちはありがたいんですけど……普通に病院に行きたいです」

丁寧に、しかし確かな意思を込めて。
自分の体のことなのに、こんなにも気を遣わせてしまっていることが、どこか申し訳なくもあり恥ずかしかった。

すると橘は、冗談めかした表情をすっと柔らかく緩め、ほほえみながら言った。

「すでに手配できています」

「え……?」
思わず、目を見開く。

「一ノ瀬さんが病院に行きたいと言われるか、言われなくても、今日中にお連れするつもりでした」

さらりと、まるで当然のように口にするその言葉に、紗良は驚いて言葉を失った。

「じゃあ……さっきの“私が診ましょうか”っていうのは……」

「冗談です」
橘は笑った。珍しく少しおどけたような笑顔だった。

紗良は一気に恥ずかしさがこみ上げてきて、ソファに置いていた毛布をばさっと頭から被った。

(ああもう……やめてくださいそういうの……!)

もぞもぞと膝の上で丸まっていると、ふいに頭の上に「ぽん」と優しい重みが乗った。

――え?

空気が変わった気がして、紗良の心臓がドクンと跳ねる。
何の音もないまま、数秒だけ、沈黙が流れる。

(ま、まさか……)

体がかぁっと熱くなる。いや、もとから熱はあるのに、それ以上に――心が、顔が、熱い。

(橘さんに……撫でられてる!?)

現実を把握したその瞬間、紗良の熱は間違いなく、さらに一度、上昇した。