お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

風呂上がり、薄手のパジャマに着替えてベッドの上に座る。スマホからは柔らかいリラクゼーション音楽が流れ、天井を見上げながらストレッチをしていた。

すると突然、音楽が途切れた。

「……?」

画面を見ると、知らない番号からの着信表示。

(間違い電話?)

通話には出ず、音楽を再び再生。ストレッチを続ける。

しかし、30分後――またもや音楽が止まり、同じ番号からの着信。

その後、さらに20分後。次は10分後。
徐々に間隔を狭めて、知らない番号からの着信が繰り返される。

胸の奥がざわつく。不快な違和感がこめかみにじわじわと広がった。

(……気持ち悪い。電源、切ろうかな)

そう思った瞬間、メッセージ通知が届いた。

「逃げられないよ。一ノ瀬大臣が責任を取らないなら、君が代償を払うべきだ。Xデーはすぐそこに。」

画面を見たまま、紗良の手がピタリと止まる。

心臓がバクバクと激しく脈打ち、呼吸が浅くなる。
肺に空気がうまく入らない。頭が真っ白になり、体が凍りついたように動かない。

指先が震え、スマホを握る手に涙がぽた、ぽたと落ちていく。

「……っ……や……っ」

声にならない声。
嗚咽すらも出せず、ただ苦しさに耐えながら、紗良は身を抱くようにしてその場に膝をついた。

次にすべき行動が、思い出せなかった。