お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

翌朝、目覚めた瞬間に、紗良は昨日とは違う自分を感じた。
まぶたの重さも、胸の中に張りついていた不安も、ほんの少し軽くなっている。

着替えを済ませて玄関を出ると、迎えに来ていた松浦がぱっと表情を和らげた。

「今日は顔色がいいですね。よく眠れたんじゃないですか?」

「ええ、おかげさまで」

自然と笑顔がこぼれた。

職場に着いても、その感覚は続いていた。
いつもより資料の読み込みも早く、メモもすらすらと取れる。頭の中がちゃんと働いている実感がある。

(……脅迫はあるけど、実際に危害を加えられたわけじゃないし、こんなに厳重な警護って……SPの皆さんにはちょっと役不足なんじゃない?)

ふと、そんなことを思ってしまった。

SPが隣に控えている光景にも、周囲は少しずつ慣れ始めていた。最初の数日はざわめきや視線が絶えなかったが、今は業務の一部のように空気に馴染み始めている。

昼休み、社食へ向かうと、同僚たちと変わらぬやりとりができた。笑ったり、仕事の愚痴を言ったり、何気ないことを話したり。

途中、松浦と交代で入ってきた河田が少し離れたところについた。ふと視線を向けると、近くの女性社員たちが小声で囁いている。

「河田さんって、あの真剣な横顔がかっこいいよね」
「うん、なんかドラマのSPみたいで」

「っていうか、実際SPじゃん」

笑い声が弾ける。
その様子に、紗良はそっとスープを口に運びながら、気づかれないように口元だけで笑った。

(……少しずつ、日常が戻ってきてるのかな)

そんなふうに思えたのだった。