お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

玄関の鍵を閉めると、紗良は一息ついて背を預けた。
いつもなら、無言の部屋に不安だけが満ちていく。けれど今日は──ほんの少しだけ、心が穏やかだった。

キッチンへ向かい、戸棚からレトルトのスープカレーを取り出す。湯を沸かしながら、冷蔵庫の隅にあった味噌汁の残り具材──豆腐のパックを取り出す。
小皿に移し、冷たいまま醤油を垂らして簡易なおかずにした。

テーブルに腰を下ろし、ゆっくりと一口ずつ味わう。
それは、温かいとか美味しいとか、そういう感覚とは少し違う。
「ああ、自分が生きてるんだ」
そんな手応えのようなものだった。

食器を片づけると、紗良は浴室へ向かう。湯船にお湯を張りながら、お気に入りのラベンダーの入浴剤を手に取る。
封を切ると、ほのかに甘い香りがふわりと広がった。

服を脱ぎ、ゆっくりと浴槽へ身を沈める。

湯が肩まで届くと、身体の隅々までじんわりと熱が行き渡る。

何日ぶりだろう、こんなふうに湯に浸かって、ゆっくりと息ができるのは。

静かで、あたたかくて、誰にも責められない時間。

「今日は……眠れるかな」

そうつぶやいた声も、自分のものとは思えないほど穏やかだった。

閉じたまぶたの裏で波紋のように広がるあたたかさに、紗良は久しぶりに──本当に久しぶりに、「生きた心地」がした。