お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

その後、紗良は机に向かいながら、今度こそ真面目に仕事に集中しようと決意した。
資料を読み進め、PCに向かってキーボードを叩きながら、ふいに意識がふわりと浮く。まぶたが重くなり、視界がじんわり滲んでいく。

──がくん。

身体がわずかに前に揺れた瞬間、

「……一ノ瀬さん」

ぴし、と背筋に電気が走った。

すぐ後ろから低くかけられた声。
驚いて顔を上げると、いつのまにか橘がすぐ後ろに立っていた。

「う、うそ、いつのまに……」

「しばらく様子を見てました。三回目ですよ、舟漕いでたの」

紗良は耳まで赤くなりながら姿勢を正した。
「……すみません……」

「無理しても効率は落ちます。仮眠をとるか、席を外しますか?」

その問いに、紗良はしばし悩んだあと、「あと30分だけ頑張ります」と言った。

橘はため息をついたが、それ以上何も言わずに静かに頷いて部屋の外へ戻っていく。

──そして15分後。

「……一ノ瀬さん」

「ひゃっ!?」

またも背後からの声に飛び起きる紗良。
橘は腕を組んで立ち、ほんの少しだけ呆れたような、それでもどこか優しげな目をしていた。

「10分仮眠、認めます。起こしますから」

そう言って橘が時計を見る。紗良は観念してうなずき、デスクに突っ伏した。

ほんの少しだけ、安心して目を閉じると、世界がすっと静かになった。