お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

昼休憩が明けてしばらく、紗良は再び資料に目を通していたが、どうにもあくびが止まらなかった。

(やばい、これは確実に寝るやつだ……)

瞬きのたびに瞼が重く、文章は頭に入ってこない。
コーヒーも、軽くストレッチをしても効果がない。

(歩き回るわけにもいかないし……そうだ!)

ふと思いついて、紗良は椅子から立ち上がり、執務室の扉をそっと開けた。
そこには予想通り、橘が無表情で立っていた。

「橘さん、すみません。ちょっと……お仕事の確認、お願いできますか?」

突然の申し出に、橘は一瞬だけ目を細め、
「確認……?」と小さく繰り返して、少し首を傾けた。

(あ、やっぱり変に思われたかな……)と紗良は一瞬焦ったが、橘はそのまま無言で一歩踏み出し、室内へ入ってきた。

その無骨で実直な動きに、紗良の心は妙にくすぐられた。

(ごめんなさい、本当は確認なんて何もないけど……ちょっとだけ、いてほしかったんです)
とはもちろん言えない。

紗良は机の上の資料を手に取るふりをしながら、「これなんですけど」と言って、橘の方に向き直った。
橘は相変わらず難しい顔をしていたが、どこか、その眉間の皺はいつもより浅い気がした。