リビングのテーブルに買ってきた日用品を並べ終え、ソファに腰を下ろした紗良は、スマホを手に取った。
何気なく開いたSNSの通知が、妙に多いことに気づく。
──@sara_ichinose 守られてるからって調子に乗るなよ
──どうせ親の金で暮らしてんだろ? いい身分だな
──また血税で寄付ごっこか。死ねば?
そして、匿名掲示板にはもっと露骨な書き込みが並んでいた。
【一ノ瀬の娘が勤務してる会社、もうすぐ爆破されんじゃね?】
【実際に親父がやってたことと変わんねぇよ。血は争えない】
【SPつけても無駄。事故なら仕方ないしなw】
背筋が冷たくなる。
これまでの脅迫とは違う。言葉の荒さも、対象の絞り方も、より陰湿で悪質だった。
昼間、父の口から聞いたあの言葉が頭をよぎる。
「……吊し上げられているだけだ。報告書を見れば、すべて数字が合っている。俺はやましいことは何ひとつしていない」
その声を、心から信じることができた。
父は、正しかった。少なくとも、自分の信じている「父」は。
なのに──なぜ、何も知らない人間が、勝手な筋書きで彼を、そして自分を裁くのか。
(もうやめて……私は、何もしていないのに……)
喉が詰まるような息苦しさを覚えながら、紗良は目を閉じた。
この部屋の静けささえ、外の悪意に薄く包囲されているような錯覚を覚える。
「日常を返して欲しい」──その願いが、また少し遠のいた気がした。
何気なく開いたSNSの通知が、妙に多いことに気づく。
──@sara_ichinose 守られてるからって調子に乗るなよ
──どうせ親の金で暮らしてんだろ? いい身分だな
──また血税で寄付ごっこか。死ねば?
そして、匿名掲示板にはもっと露骨な書き込みが並んでいた。
【一ノ瀬の娘が勤務してる会社、もうすぐ爆破されんじゃね?】
【実際に親父がやってたことと変わんねぇよ。血は争えない】
【SPつけても無駄。事故なら仕方ないしなw】
背筋が冷たくなる。
これまでの脅迫とは違う。言葉の荒さも、対象の絞り方も、より陰湿で悪質だった。
昼間、父の口から聞いたあの言葉が頭をよぎる。
「……吊し上げられているだけだ。報告書を見れば、すべて数字が合っている。俺はやましいことは何ひとつしていない」
その声を、心から信じることができた。
父は、正しかった。少なくとも、自分の信じている「父」は。
なのに──なぜ、何も知らない人間が、勝手な筋書きで彼を、そして自分を裁くのか。
(もうやめて……私は、何もしていないのに……)
喉が詰まるような息苦しさを覚えながら、紗良は目を閉じた。
この部屋の静けささえ、外の悪意に薄く包囲されているような錯覚を覚える。
「日常を返して欲しい」──その願いが、また少し遠のいた気がした。



