お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

夕暮れ時、自宅の玄関前まで戻ってくると、そこには河田の姿があった。
橘と松浦の姿を見て、静かに敬礼し、持ち場の交代を告げる。

「では、ここからは僕が引き継ぎます」
河田の低く落ち着いた声に、紗良は思わず背筋を伸ばす。

「ありがとうございました」
紗良は深く頭を下げた。
「おふたりが一緒にいてくださって、心強かったです」

橘はそれに言葉を返すことなく、眉間に皺を寄せたまま、彼女の動きを見守っている。
その視線が決して無関心ではないことを、紗良も少しずつ感じ取りはじめていた。

一方で松浦は、ふわりと優しい笑みを浮かべて言った。
「久しぶりに、外でお買い物できてよかったですね。急ぎで必要なものが出た場合は、できる限り配慮しますから、遠慮なく連絡してください。ただし──」

そこで松浦は、少しだけ声を引き締める。
「くれぐれも、ひとりでの外出はお控えくださいね」

「はい、もちろんです」
紗良は笑顔で頷いたものの、次の瞬間、小さく心の中でつぶやいた。

(……って言っても、玄関の前に立たれていたら、そもそもどこにも行けないけど)

けれど、それはどこか守られているという安心のため息でもあった。
紗良は最後にもう一度ぺこりと頭を下げ、バッグと袋を抱えて玄関の鍵を開ける。

その背中を、橘は無言で見守っていた。