お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

「そのうちの一部を、私的に流用したと報じられている。だが、実際は違う。昔から交流のある孤児院や、地域の教育支援団体など、特定のNPOに対して、定期的に寄付を行ってきた。それは何年にもわたるもので、額も内容も、常に記録に残してある」

紗良は口を挟まず、じっと父を見つめた。

「問題視されているのは、この数年で寄付の額が一時的に増加したことだ。それについては、理由がある。これまで社会貢献事業に資金を出していた半導体企業、パロデアニクスが経営難に陥り、出資を減らした。その分の資金穴を私が補填した。それだけだ」

そして、ふっと苦笑のような息をついた。

「それが──“自分の懐に入れた”と吊し上げられた。正直、呆れている。政治家は信頼されない職業だと、改めて思い知った」

机の上の数字を見つめながら、続けた。

「収支報告書には一円の狂いもない。寄付先にも証明できるし、何より、どこかで誰かが恩恵を受けている。それだけは間違いない。だが、世間はそう見てくれない。敵にすれば“疑わしきは罰せよ”だ。まるで推定有罪だよ」

しばしの沈黙。

「……お前には関係のないことだが、渦中に巻き込んですまなかった」

父の声が、ほんのわずかに揺れた。

紗良は初めて聞く説明の具体性に、驚きとともに、少しだけ言葉を失っていた。
政治家としてではなく、父として向き合おうとしている姿が、そこにあった。

「誰にも言うな。これを明かしていい段階じゃない。だが、お前には知っておいてほしかった」

娘として、ではなく、一人の人間として向き合う。

──その言葉の重さが、紗良の胸に、静かに沁みていった。