翌朝、紗良は珍しく父から直接「時間を取ってほしい」と連絡を受けた。
職場には午前中のみ休暇を申し出て、橘とともに議員会館の一室──父の執務室を訪れた。
橘はドアのそばで待機しようとしたが、父の一ノ瀬大臣が「秘書官もSPも外してくれ」と言い、室内には血のつながった親子だけが残された。
「座りなさい」
一ノ瀬は静かな声でそう言うと、自らも椅子に腰を下ろした。
どこか痩せたように見える横顔に、紗良は一瞬、かすかな動揺を覚えた。
「まず先に、心配をかけたことを謝る。お前にとっては、またか、と思っているかもしれないが」
紗良は何も言わず、ただ頷いた。
一ノ瀬は胸ポケットからメモ用紙を取り出し、無言でテーブルに置いた。そこには数行の数字が書かれていた。彼はそれを指差しながら、説明を始めた。
「報道されている“裏金”とされている件だが──まず、違法性はない。これはすべて、企業団体からの献金で、正式な手続きを経たものだ。収支報告書に記載済みで、領収書も全てある」
視線は紙の上に落ちたまま。だがその口調には揺るぎがなかった。
職場には午前中のみ休暇を申し出て、橘とともに議員会館の一室──父の執務室を訪れた。
橘はドアのそばで待機しようとしたが、父の一ノ瀬大臣が「秘書官もSPも外してくれ」と言い、室内には血のつながった親子だけが残された。
「座りなさい」
一ノ瀬は静かな声でそう言うと、自らも椅子に腰を下ろした。
どこか痩せたように見える横顔に、紗良は一瞬、かすかな動揺を覚えた。
「まず先に、心配をかけたことを謝る。お前にとっては、またか、と思っているかもしれないが」
紗良は何も言わず、ただ頷いた。
一ノ瀬は胸ポケットからメモ用紙を取り出し、無言でテーブルに置いた。そこには数行の数字が書かれていた。彼はそれを指差しながら、説明を始めた。
「報道されている“裏金”とされている件だが──まず、違法性はない。これはすべて、企業団体からの献金で、正式な手続きを経たものだ。収支報告書に記載済みで、領収書も全てある」
視線は紙の上に落ちたまま。だがその口調には揺るぎがなかった。



