お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

ここまで物語を読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。

このお話は、警視庁警護課のSP・橘航太と、財務大臣の娘・一ノ瀬紗良の関係を通して、「守ること」や「信じること」を描いてきました。

作中に登場した“内閣情報調査室(内調)”や“警護の現場”については、実際の制度や事例を参考にしながらも、物語としての表現を優先して脚色を加えています。
現実の警護体制は、厳格なルールと高度な判断によって動いており、本作のような感情の入り込む余地は、きっと本来はないものだと思います。
でもだからこそ、フィクションの中で描ける“人間らしさ”や“想い”が、あるのではないかとも思っています。

また、物語ではSNSでの誹謗中傷や、事実とは違う情報に心を揺さぶられる様子も描きました。

今の時代は、誰もが自由に発信できるからこそ、どんな情報もそのまま鵜呑みにするのではなく、ちゃんと見極める目が求められるのかもしれません。
そして、たとえ見えにくくても、誰かの背負っているものや、大切にしているものに、少しだけ想像を向けられるような、そんな優しさも。

紗良が最初、父や橘の姿を誤解していたように、私たちも“見えていること”だけで人を判断しがちです。

でも、本当は、言葉にならない想いや、黙って続けている努力の中にこそ、その人の誇りや覚悟が宿っているのかもしれません。

この物語が、そんな“見えないけれど大切なこと”を、ほんの少しでも思い出すきっかけになっていたら嬉しいです。

また次の作品で、お会いできますように。

桃井凛