お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

紗良と航太は、背を向けたまま歩きながらも、父の最後の言葉を胸の奥で反芻していた。
静かに重なる手の温もりが、過去の痛みも、すれ違いも、すべてを包み込んでいくようだった。

「……きっと、大丈夫だね」
紗良の呟きに、航太が隣でうなずく。
「うん。俺たちは、ちゃんと前に進んでる」

ふと振り返った紗良の視線の先では、父・一ノ瀬岳が選挙カーの上で堂々と手を振り、聴衆の拍手に応えていた。
かつてはすれ違っていたその背中が、今は確かに、自分たちを後押ししている気がした。

それぞれが、それぞれの道を歩きながら、互いの存在に背中を押されている。
新しい未来は、すでに始まっていた。

――光差す方へ。
この愛と、それぞれの信念を胸に、彼らは自分たちの人生をしっかりと歩んでいく。