お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

翌朝、紗良がマンションの玄関を出ると、エントランス前で河田と松浦が並んで立ち、なにやら引き継ぎをしているところだった。

松浦が紗良に気づき、爽やかな笑顔で一礼する。

「おはようございます。一ノ瀬さん。本日は日中、私が担当いたします」

柔らかく澄んだ声に、紗良はふっと表情を緩めた。
(やっぱり女性のSPは安心感があるな)
そんな思いが心の中でふっと膨らみ、自然と肩の力が抜けた。

河田が時計を確認しながら「それでは、夜間は橘が参りますので」と短く言い、軽く頭を下げて立ち去っていった。

車に乗り込み、会社へと向かう道すがら、松浦が軽くこちらに体を向ける。

「慣れました?……なんて、慣れるわけないですよね」
冗談めかしたその言葉に、紗良は小さく笑って答える。

「はい、慣れるのはやっぱり難しいです。でも、少しずつ要領はつかめてきました」

「さすが一ノ瀬さん、飲み込みが早いですね〜」と、松浦は笑いながら答える。
気さくなその空気に、紗良は久しぶりに気を抜いて話せる感覚を覚えた。

そしてふと、松浦が声のトーンを落とす。

「ところで、あのあと……DMとか、また来ていませんか?」

その問いに、紗良はスマホの画面を思い浮かべながら首を振る。

「いえ、あれ以来は何も。今のところは大丈夫です」

松浦は小さく頷いて、ほっとしたような表情を浮かべた。

「よかったです。……でも、もし少しでも気になることがあったら、本当に、何でもおっしゃってくださいね。誰にでも、いつでも。遠慮なんてしなくていいんですから」

その言葉に、紗良は少し目を見開いたあと、小さく「ありがとうございます」と答えた。
温かい言葉が、朝の冷たい空気の中で胸にじんわりと染み込んでいくようだった。