お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

玄関のドアを開けた瞬間、涼しげなスーツ姿の航太が、片手にテイクアウトの袋を提げて立っていた。

「おつかれ。はい、今日はカフェごはん風にしてみた。ほら、紗良こういうの好きでしょ」

そう言って、無造作に紙袋を差し出してくる。

紗良は思わず笑って「ありがとう」と受け取るけど、頭のどこかでずっと気になっていたことが拭えない。

——スッピン、しかも髪、生乾き。どうしよう……

一歩中に入った航太が、何気なく紗良の姿を見る。

部屋着のまま、濡れた髪をタオルでくしゃくしゃと拭いている紗良の姿をじっと見つめると、ふっと目元が笑った。

「……シャワーも浴びて、部屋着に着替えて。準備万端だな」

「——っ!!」
紗良の手がぴたりと止まる。

耳まで真っ赤に染まり、航太の顔を見てはっと視線をそらす。

「ち、ちがうし! そういうんじゃなくて、あの、その……お風呂って、ほら、体を清潔に保つためのもので! 健康管理! それに最近すぐ汗かくし、夏は菌が繁殖しやすいから! 予防医学的なあれで……!」

タオルを振り回しながら、必死で並べ立てるその言葉に、航太は一瞬きょとんとした後、吹き出すように笑った。

「……誰が菌の話するんだよ、そんな焦って。かわいすぎだろ」

「うるさい……っ!」
紗良はふてくされて背中を向けるが、耳まで真っ赤なその姿を、航太は微笑ましく見つめながら、靴を脱ぎ、そっとドアを閉めた。

——たぶん、何十年先になっても、この人には敵わない。

そんな予感が、紗良の胸をじんわりと温めた。