お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

「さ、ごはん作ろうか」

そう言ってキッチンに向かった航太を、紗良も慌てて追いかける。

「わ、私も手伝う! 今日は一緒にやりたいなって思ってたから!」

「……大丈夫? 包丁の持ち方とか覚えてる?」

「ちょっと失礼じゃない! 私だってそれくらい――」

と言いかけた瞬間、紗良は玉ねぎの皮を豪快に剥がしすぎ、可食部までベロリと剥いてしまう。

「……いや、それ剥きすぎ。あと3分の1くらい残せる」

「えっ!? そんなギリギリまで!? だって薄皮って書いてあるし!」

「“薄皮”って書いてあるけど、実際には“可食部を残して”って意味ね。ほら、貸してみ?」

航太は紗良の手から玉ねぎを受け取り、しゃっしゃっと手早く美しく皮を処理してみせた。

「……くぅ。なんか、悔しい」

「じゃあ、これ切ってみて?」

と差し出されたのはにんじん。

「斜めに切るの? それとも輪切り?」

「乱切りにしてって言ったら、どうする?」

「……え、乱? ランてどんな……」

「まさか聞いたことない?」

「聞いたことくらいは……ある」

「嘘つけ」

「うぅ……」

情けなく肩を落とす紗良を、航太はふっと笑って見下ろす。

「大丈夫。教えてあげる。ちょっとこっち来て」

航太が背後に回り、そっと紗良の手を包み込むようにして、包丁の持ち方を整える。

「まず、こう握って、こう角度をつける。で、力を抜いて、リズムを意識して」

「……う、うん」

緊張で固くなっていた紗良の手を、航太がすこし強めに包み直す。

「そんなに力まなくていい。リラックスして。……俺がついてるだろ?」

そのささやくような声に、紗良は思わず頷く。

どこか不器用な動作と、優しく補う手つき。
ふたりの距離は近く、けれど心地いい緊張感と、確かな安心がそこにあった。

やがて調理が進み、台所には湯気といい香り、そしてふたりのくすくすとした笑い声が満ちていた。