お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

「流石に今日は動きすぎたな……」

夕方、自宅に戻った紗良は、部屋着に着替えるとソファにばたりと倒れ込んだ。会社復帰初日。気を張っていたせいもあり、全身がじんわりと重たい。

――ピンポーン。

インターホンが鳴ったのは、そんなときだった。

玄関を開けると、スーパーの袋を両手に提げた航太が立っていた。

「おかえり」と紗良が言うと、

「ただいま」と短く返し、航太は台所に直行して食材を冷蔵庫へと手際よくしまっていく。

その後ろ姿を、紗良はソファに寝転んだまま、横目でじっと見つめていた。
どこか甘えるように、期待を込めた上目遣いで。

(何かしてくれるかも……)

そんな“甘やかされ待ち”の空気を全開にしていると、冷蔵庫の扉を閉めた航太が、ふいにこちらを振り返った。

彼はゆっくりとジャケットを脱ぎ、ネクタイをほどき、ワイシャツのボタンを二つほど外し始める。

(……えっ!?)

紗良は突然、姿勢を起こしてソファの端へそっと逃げるように身を寄せた。

明らかに距離を取りつつ、視線も泳ぎ気味。

「どうしたの?」

航太が怪訝そうに訊ねると、

「い、いや、あの……っ」

どこか目を逸らしながらしどろもどろになる紗良。
その様子で、航太は何となく察した。

――この子、もしかして俺が“そういう”つもりで近づくとでも思ってる?

その瞬間、航太の目の奥に、いたずらっぽい光がきらりと灯った。

「もしかして……期待した?」

「えっ、な、なにをっ!?」

「そんなに見つめてたじゃん、ソファで上目遣いで。ほら、あれ絶対、かまってポーズでしょ?」

「ち、違うし! そ、それに私は……っ」

「……俺に襲われるって思った?」

耳まで真っ赤になった紗良が何も言えず固まると、航太はふっと肩を揺らして笑った。

「ごめん、俺、ただ暑かったから緩めただけ。……そんなつもり、今日はまだないよ」

その「今日はまだ」という含みのある言い方に、紗良はさらに動揺し、クッションを手にしてソファに突っ伏した。

そんな紗良の髪を、航太は優しく撫でながら呟く。

「俺、紗良のこと、すごく大事にしたいからさ。焦らなくていいよ。ちゃんと、俺の手で少しずつ慣らしてあげる」

その低く落ち着いた声に、紗良の心臓はバクバクと音を立て続けていた。