お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

久しぶりの出社。
ビルのエントランスを抜け、社の空気を胸いっぱいに吸い込むと、少しだけ緊張と懐かしさが入り混じった感覚が胸をくすぐった。

エレベーターを降り、執務室のドアを開ける。
真っ先に目に入ったのは、坂口の姿だった。

彼女は席を立ち、柔らかく頭を下げる。

「おかえりなさい。……いろいろ、大変でしたね」

その言葉に、紗良はゆっくりと首を振った。

「いえ、むしろ私のせいで、あなたにたくさんの苦労をかけてしまいました。……いつも支えてくれて、ありがとう。坂口さんがいなかったら、私、本当にどうなってたか……」

坂口は、照れくさそうに小さく笑うと、
「お力になれて良かったです」と静かに応えた。

そこへタイミングよく、高坂と竹下部長が姿を現す。

「お帰りなさい、一ノ瀬さん」

高坂の明るい声に続いて、竹下部長も笑顔で頷いた。

「戻ってくれて、嬉しいよ」

紗良は軽く頭を下げた。

「ただいま戻りました。
これから、またよろしくお願いします」

その言葉に、周囲の社員たちもそれぞれのペースで小さな歓迎の空気を送ってくれていた。

岡島のデスクだけが静かに空いたままだったが、その他は何も変わらぬ日常が、そこにあった。

紗良は胸の奥に、そっと力が湧いてくるのを感じた。

――またここで、頑張っていこう。

そう、心の中で小さく決意を新たにした。