お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

静かな部屋の中。橘の腕の中にすっぽりと収まったまま、紗良がぽつりと呟いた。

「……航太くん、今日、帰る?」

問いかけは静かで、でもどこか名残惜しそうだった。

橘は少しだけ間を置いて、紗良の髪に頬を寄せたまま答える。

「……帰るよ。明日、仕事だから」

言いながらも、本当は帰りたくないという気持ちが紛れもなく込められていた。

「お仕事……警護?」

紗良が不安げに尋ねると、橘はその言葉にふっと笑みを浮かべた。

「いや、しばらくは訓練と事務仕事がメイン。紗良の警護、いろいろ手続きあってさ。解除の報告書とか、体制再構築の記録とか。君一人で何ページあると思ってんの?」

少し大げさに肩をすくめる航太の声に、紗良は目を丸くする。

「……じゃあ、まだ私のお仕事、残ってるんだ」

そう言って、少しだけ嬉しそうに笑った。

橘もその表情を見て、優しく微笑む。

「うん、手のかかるお嬢様だからね」

冗談めいた言い方に、紗良はぷくっと頬を膨らませる。

「もー、そういうとこ、警護の時と変わらないんだから」

「褒め言葉として受け取っとくよ」

ふたりの間に、穏やかで優しい空気が流れていた。
別れを惜しみながらも、次に会える日のあたたかい予感を胸に、時間はゆっくりと進んでいく。