お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

日が傾き、公園の灯りがぽつぽつと灯り始めた頃。
橘は腕時計をちらりと見てから、紗良に言った。

「このまま帰るのも、ちょっともったいないな。寄り道していい?」

「うん、もちろん」

橘の案内で、ふたりは車に乗り、
都心の一角――

再開発エリアの高台にある、あまり知られていない展望公園へと向かった。
観光地でも夜景名所でもないその場所は、警護の下見や現場確認で橘が何度か訪れた中のひとつだった。

車を停め、数段の階段を上がると、目の前には――。

「……きれい」

紗良が思わず漏らした。

そこからは、都心のビル群がちょうどよく見渡せる。
夏の夜空に、無数の明かりがきらめき、
微かに風が頬を撫でる。

「この場所、一般にはあんまり知られてない。俺の“警護官マップ”の中では、かなり上位にランクインしてる」

「え、そんなのあるの?」

「……まあ、頭の中に、だけどな」

紗良はふふっと笑った。
「さすが、真面目すぎる警護官」

「紗良に言われると、ちょっと悔しいな」

ふたりは並んで手すりにもたれながら、しばし夜景に見入る。

やがて、紗良がぽつりと聞いた。

「ねえ、今度は“恋人マップ”にこの場所、登録してくれる?」

橘は少し驚いたように目を見開き、すぐに柔らかく笑った。

「……もう、登録済みだ」

その横顔に照明がやさしく当たり、ふたりの距離は、また一歩だけ近づいた。