お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

季節は、蝉の声が真っ盛りの夏。

数日ぶりの再会。日差しの柔らかくなった夕方、紗良の自宅前に、橘航太が現れた。

「お迎えに上がりました」と、どこか冗談めかした声で言うと、紗良はふわりと笑って頷いた。

「ちょっと歩こうか。近くの公園、緑がきれいだったと思う」

橘はそう言って、自然と歩調を紗良に合わせる。その姿は以前のように無意識に周囲を警戒しながら、車道側に立ち、後方も時折確認していた。

紗良は思わずくすりと笑う。

「橘さん、まだ警護官のクセ抜けてない」

「……そうか?」

「うん。でも、それが好き」

そう無邪気に言われて、橘はほんの少し目を泳がせると、照れ隠しのように前髪を指でかきあげた。

歩き慣れた地元の道を抜けると、小さな木陰のある公園が広がっていた。

橘はその地形や周囲の構造を、無意識に頭の中で地図に起こしていた。度々、警護で都内を歩いてきた彼にとって、こうした場所の情報は体の一部のように染み付いている。

だが、今は違う。

紗良と過ごす時間。肩を並べて、何気ない風景の中に笑い声が混ざっていく。それが、何よりも特別だった。