お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

警護解除の通達が終わったあと、他の警護官たちは静かに敬礼し、そして空気を読むように順にその場を後にしていった。
数分前まで整然と並んでいた玄関前は、気づけば橘と紗良、ふたりきりになっていた。

「少し、いいですか」

橘が声をかける。
どこか、さっきまでとは違う、仕事ではない声音だった。

紗良が頷くと、橘は自分のスマホを取り出した。
画面を操作してから、彼女のスマホをそっと受け取る。

手慣れた手つきで、電話番号とLINEを登録していく。
「……はい、完了です」と微笑んで返すその顔は、どこか少し照れているようにも見えた。

紗良はその画面を見て、口元にふわりと笑みを浮かべた。

「ありがとう」

それだけを、まっすぐな瞳で伝える。

橘はほんのわずかに目をそらしながらも、すぐに顔を戻すと、ふっと微笑み返す。

「夜は、あんまり1人で出歩くなよ」

そう言ってから、橘はそっと紗良の頭に手を置き、やさしくポンと撫でた。
その手のぬくもりと、優しさに込められた想いが、胸に静かに沁みてくる。

そして、何も言わずに背を向けると、橘は夜の道へと歩き出した。

紗良はその背中を、しばらくのあいだ見つめていた。