お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

その夜、空には雲ひとつなく、満月が街灯のように照っていた。

日付が変わる直前。
自宅前の通りに、5人の警護官が整列する。
その表情には、任務を終える緊張と、どこか名残惜しさがにじんでいた。

橘航太は、隊列の中央から一歩前へ出る。
スーツの前を軽く整えたあと、静かに口を開いた。

「通達いたします」
その声は、真夜中の空気にしっかりと響く。

「令和6年8月22日 午前0時00分。ただいまをもちまして、
一ノ瀬紗良さんに対する警護を解除いたします」

「警護活動へのご協力に、深く感謝申し上げます」

橘は一呼吸おいて、最後の一言を、仲間に視線を送りながら告げる。

「……ありがとうございました」

「ありがとうございました!」
全員の声がそろい、一斉に深く頭を下げた。

その瞬間、あまりに静かで、虫の鳴き声だけが遠くから響いた。

紗良は、ドアの前に立ったまま、黙って彼らを見つめていた。
そしてゆっくりと歩み寄り、静かに、けれど確かに頭を下げる。

「本当に……ありがとうございました」
感謝の気持ちを噛みしめながら、深々と頭を下げた。

その声に、警護官たちは小さく頷き返す。
この瞬間、ひとつの任務が、静かに、そして誇りを持って終わりを迎えた。