お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

父の記者会見が終わったあと。
テレビの画面がエンディングのニュースジングルに切り替わったその瞬間、紗良はゆっくりとスマートフォンを手に取った。

手はわずかに震えていた。
画面を開き、SNSのタイムラインを更新する。

そこには、数時間前までとは打って変わった、まるで掌を返したようなコメントの数々が並んでいた。

「さすが一ノ瀬大臣…本物だった」
「完全勝利すぎてメディア沈黙w」
「資料ガチで出してきたの強すぎる」
「財務大臣は日本の希望!次期総理待望論あるぞこれ」
「娘さんも優秀らしいね、親子で国を背負ってるって感じ」

目の奥がじんと熱くなった。
まぶたの裏に広がるものをどうにか抑えようと、紗良はゆっくり目を閉じた。

――耐えなきゃ。泣いてる場合じゃない。
そう思った瞬間だった。

すぐ隣に立っていた橘が、何も言わずにそっと紗良の手からスマートフォンを取り、テーブルの上に伏せて置いた。

そして、そのまま彼女の横に腰を下ろす。
無言のまま、片腕を軽く広げる。

「……おいで」

小さな声だった。
でも、その声に込められた真っすぐな想いは、紗良の心に深く届いた。

彼女は、静かに橘の胸へ身を預けた。
何も言わず、ただ、そこにある体温に身をゆだねて。

じんわりと涙がこぼれた。
嗚咽はない。
ただ、静かに。
熱い雫が頬を伝って落ちていく。

背後では、旗野、松浦、河田が、目を逸らすようにして距離を取った。
壁に寄りかかったり、台所に向かったり、ある者はわざとスマホをいじるふりをして視線をそらした。

居場所のないような空気。
だが、その場にいた誰もが理解していた。
この一瞬が、彼らの“守るべきもの”の核心であることを。