東京・芝浦湾岸にそびえる「タワーリンク・レジデンス48」。
首都圏の要人や海外からのゲストを迎えるためのセキュアな施設として、外務省が一部フロアを借り上げている高層ビルだった。
その47階。
ガラス張りのミーティングルームは、夕暮れの光を受けて琥珀色に輝いていた。
紗良はスーツの裾を整えながら静かにドアを開けると、すでに父がその奥で彼女を待っていた。
橘はいつものように傍らで待機していたが、床から天井まで全方向に広がるガラス窓をちらりと見て、さりげなく視線を外した。
紗良はふとその仕草に気づき、内心で小さく笑みを浮かべる。
松浦から教えられた“弱点”がここでも静かに現れていた。
「よく来てくれたな、紗良」
父・一ノ瀬岳は、無骨な表情を少しだけ和らげ、手元の書類を閉じた。
「準備は整った。明日の午後、官邸で記者会見を開く。……報道で騒がれている件について、すべての資料を示して、潔白を証明するつもりだ」
紗良は席に着いたまま、父の目をじっと見つめた。
父は少し間を置いて、言葉を続けた。
「以前の裏金問題に加えて、過去に取り組んだ官民連携プロジェクトがなぜ頓挫したのか。どこに問題があり、誰がどのような判断をしたのか。その全てを含めて説明する。……時間がかかってしまって、本当に申し訳なかった」
普段は謝罪の言葉を決して口にしない男だった。
紗良の胸に何かがじわりと満ちる。
「……うん。ありがとう、お父さん」
遠く、ガラス越しに見える東京の夜景が、街のざわめきを包み込むように広がっていた。
背後で控えていた橘は、紗良と父の間に生まれた静かな和解の空気を感じ取りながら、窓の外を見ないよう、黙って立ち続けていた。
首都圏の要人や海外からのゲストを迎えるためのセキュアな施設として、外務省が一部フロアを借り上げている高層ビルだった。
その47階。
ガラス張りのミーティングルームは、夕暮れの光を受けて琥珀色に輝いていた。
紗良はスーツの裾を整えながら静かにドアを開けると、すでに父がその奥で彼女を待っていた。
橘はいつものように傍らで待機していたが、床から天井まで全方向に広がるガラス窓をちらりと見て、さりげなく視線を外した。
紗良はふとその仕草に気づき、内心で小さく笑みを浮かべる。
松浦から教えられた“弱点”がここでも静かに現れていた。
「よく来てくれたな、紗良」
父・一ノ瀬岳は、無骨な表情を少しだけ和らげ、手元の書類を閉じた。
「準備は整った。明日の午後、官邸で記者会見を開く。……報道で騒がれている件について、すべての資料を示して、潔白を証明するつもりだ」
紗良は席に着いたまま、父の目をじっと見つめた。
父は少し間を置いて、言葉を続けた。
「以前の裏金問題に加えて、過去に取り組んだ官民連携プロジェクトがなぜ頓挫したのか。どこに問題があり、誰がどのような判断をしたのか。その全てを含めて説明する。……時間がかかってしまって、本当に申し訳なかった」
普段は謝罪の言葉を決して口にしない男だった。
紗良の胸に何かがじわりと満ちる。
「……うん。ありがとう、お父さん」
遠く、ガラス越しに見える東京の夜景が、街のざわめきを包み込むように広がっていた。
背後で控えていた橘は、紗良と父の間に生まれた静かな和解の空気を感じ取りながら、窓の外を見ないよう、黙って立ち続けていた。



