お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

湊からの情報提供を受けたネットメディアの記者が、問い合わせメールをセラフィコに送ったのは、株主総会の襲撃事件の翌日だった。

その文面は、まるで内部情報を確信しているような文脈で書かれていた。

——“財務大臣の娘である一ノ瀬紗良氏が株主総会に代理出席したとの話がありますが、事実でしょうか”

当初、広報部はこのメールを「取材の一環」として処理しようとした。
だが、文中の“警護付き”“警察関係者の出入り”という文言に、高坂の目が止まった。

「誰が、こんなディープな内容を知っているんだ……?」

この問い合わせの扱いは、即座に社内の情報セキュリティ部門へと引き継がれた。
さらに、紗良の護衛を担当していた公安部側にも情報は共有される。
“関係者以外が知り得ない情報が、社外に流出している可能性あり”

高坂は、調査のために社内のメールログと入退館記録を洗い直した。
さらに、紗良の行動予定を知っていた「内々の6人」

——高坂自身、竹下部長、坂口、岡島を含む5人の動向と通信履歴を静かにチェックし始めた。

公安の担当官もまた、社外からの情報流出の端緒を探る中で、あるフリー記者の名前を拾う。

——早川湊。これまでに何度も、政治家の家族に関するスキャンダル記事を手がけていた記者。

公安が動いたのは、彼のSNSとメールサーバーの通信傍受申請が通った直後だった。
形式上は別件の調査とした上で、湊の通信履歴を追う中で、ある携帯番号が浮かび上がる。

岡島結菜のものである。

直接的なやり取りではなく、ごく短いLINEのやり取り。
だが、その時刻は、紗良の株主総会代理出席が決定した翌日と一致していた。

調査官が呟いた。

「この女、口を滑らせたな……」

同時に、岡島の出勤履歴や行動記録も、高坂ら調査班に共有された。
明確な裏付けはまだない。だが、記者との私的な交際と、情報の伝播のタイミング。

すべてが、細い糸で繋がりはじめていた。