お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

岡島は、ずっと怯えていた。

紗良が株主総会で襲われたというニュースを目にした日から、
心臓が止まりそうなほどの恐怖が胸を支配していた。

最初はただ驚きと混乱だった。
だが、会社の中に公安や刑事課の関係者が頻繁に出入りするようになり、
社内には誰が事情を聞かれたのかが噂になり始めると、
岡島の中である疑念が現実味を帯びていった。

——いつか、自分のところにもくる。

自分が何かを言ってしまったのではないか。
誰にも言っていないつもりだった。けれど……。

岡島の心を最も強く締めつけていたのは、紗良への罪悪感だった。

いつも優しくて、細かい仕事まできちんと見てくれて、
自分のような新人にも対等に声をかけてくれる。
そんな上司が、自分の不用意な一言で命の危険に晒されたかもしれない——

そう思うと、毎日出社するたびに胃が痛くなった。

岡島の交際相手、早川湊。
ゴシップ誌の記者だと知ったのは付き合ってしばらく経ってからだった。
最初は「商社系」とだけ聞かされていた。
合コンで出会った彼は妙に話がうまくて、自然と惹かれ、気づけば関係が深まっていた。

湊は時々、何気ない調子で「最近、何か面白いことあった?」と聞いてきた。
岡島は最初、それをただの会話として受け取っていた。
だから、ある日残業が続いて疲れ果てた頭で、何気なく、ぽろっと言ってしまった。

「うちの上司が、代理で株主総会に出ることになって……。大役だよね」

そのとき、湊は「へえー、すごいね」とだけ言って、興味なさそうにスマホをいじっていた。
その反応に岡島は安心して、特に深く考えなかった。

けれど、数日後、紗良が襲われた。

あの一言が、あのタイミングで漏れていたら。
もし、湊が……。

岡島は誰にも相談できなかった。
何も証拠がない。
けれど、自分の中では確信に近い恐怖だけが膨らんでいった。

(私のせいかもしれない……)

そう思いながら、毎朝、何食わぬ顔で会社に来る。
仕事を休めば、それこそ疑われる——

それだけが、ぎりぎりの理性をつなぎとめていた。

パソコンの画面越しに、
紗良の優しい声が届くたび、岡島の胸は締めつけられた。

「いえ……そんなことありません……」

声は、自分でも情けなくなるほど小さかった。
心のどこかで、紗良に抱きしめて謝りたかった。
けれどその一歩を踏み出す勇気も、岡島にはなかった。