お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

午後の光がカーテン越しに柔らかく差し込む部屋。
紗良はソファのテーブルにパソコンを置き、背筋を正して画面に向かっていた。
オンライン会議のウィンドウには、数人の社員たちの顔が並び、
画面越しに資料のデータが次々と共有されていく。

「この部分のチェック、もう一度お願いします」と坂口が言うと、
紗良は「了解です」と短く答えて、タブを切り替える。

仕事モードの空気の中、ふと紗良が岡島に声をかけた。

「岡島さん、先週お願いした文書の整理だけど、もしやりづらいことがあったら遠慮なく言ってね」

画面の端に映る岡島は、どこか肩に力が入りすぎているような、ぎこちない動きでうなずいた。
目線も定まらず、何か言おうとして口を開きかけては、また閉じる。

それに気づいた紗良は、少しだけ表情を和らげたまま、坂口に視線を移した。

「坂口さん、岡島さんとあなたにお願いしてた資料の進捗、どう?」

坂口はカメラに向き直り、やや早口で説明を始める。

「昨日までに英語の要約は完了していて、今はデータ整理を岡島さんが進めてくれています。
ただ、ちょっと不明点が多い部分があって、調整しながら進めている状態ですね」

「そう」と頷いた紗良に、坂口が続ける。

「岡島さん、今の進捗で追加で共有しておくことってあります?」

画面の中で岡島の映像が微かに揺れた。

だが、何も発せられなかった。

一瞬の沈黙が流れる。
空気が少しだけ重くなったその瞬間——紗良が穏やかな声で言った。

「岡島さん、仕事しにくいよね。本当に申し訳ない」

その声にはどこか、自分を責めるような響きがあった。

すると岡島は、ふっと何かを噛み締めたような表情になり、ほんのかすかに震えた声で答えた。

「いえ……そんなことありません」

まるで今にもどこかへ飛んでいってしまいそうな、か細く、けれど紗良の胸に残る声だった。