お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

夜の待機室。松浦は湯気の立つマグカップを手に、ふと考え込んでいた。
交代の合間、旗野が何気なく声をかける。

「どうした? 松浦、らしくもない顔してる」

「……あの二人、最近、少し距離が近い気がして」

松浦は素直に口にする。
警護官としての感覚がそう告げていた。
橘の目の動き、言葉の間、そして紗良の表情――どれも以前とは微かに違っている。

すると旗野は、ふっと笑った。

「松浦。あの二人は、大臣公認カップルみたいなもんだよ」

「え?」

「最初から橘が特別な思いを持ってたってこと、俺も知ってた。で、大臣も早い段階から気づいてた。
それでも橘は自分を律して、ずっと距離を取ってたんだ。
紗良さんに何かあっても、動じず、任務を果たしてた」

「……」

「で、今はもう、トップも“警護に支障がない限り”ってことで黙認してる。
甘い空気が流れようが、紗良さんがくっつこうが、俺は何とも思わない。
むしろ、あれでバランス取れてるなら、いいことじゃないか」

松浦はしばらく無言だったが、やがて目を伏せて、ふっと息を吐いた。

「そう……ですか。そうだったんですね」

肩の力が抜ける。
橘の一挙一動に、警護官として、仲間として、目を光らせていた。
でも、そうか――見守っていい関係なのか。

(まったく、あの子ったら……)
そう内心で紗良を“娘”のように思う気持ちが、不意にこみ上げる。

母親のような、そんな気持ち。
安心と、微笑ましさと、少しだけの照れくささを含んで、松浦は静かに笑った。