お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

「でも……」
紗良はぽつりと呟いた。

「好きになっちゃいけないのかなって、やっぱり思っちゃう時もあります。」

松浦は少しだけ紗良に顔を向け、返事を急がずに待った。
紗良は続ける。

「橘さんは真面目で責任感強くて、絶対に境界線を越えない。
だから、私がこの気持ちを表に出せば出すほど、あの人を困らせるんじゃないかって……」

ソファの背もたれに頭を預けながら、紗良は天井を見上げた。

「もし、私のせいで、橘さんが何かを失うことになったらって思うと、怖くなるんです。わがままなのかな、私」

沈黙が一瞬だけ流れたあと、松浦が口を開いた。

「わがままじゃないと思いますよ。紗良さんの立場からしたら、当然の感情だと思う。だって、あの人……ちょっと“ずるい”ですからね」

「え……?」

松浦は笑みを浮かべたまま、続けた。

「真面目な顔で距離を取るくせに、優しさだけは手を抜かない。そりゃ、好きになりますよ。こっちは感情出せないのに、あっちは人間として最高レベルで優しくしてくるんですから」

紗良はその言葉に笑って、少し潤んだ目で松浦を見た。

「松浦さんって……ちょっと恨み節?」

「違いますよ。私が言いたいのは、橘警護官は紗良さんにちゃんと向き合ってるってことです」

「……向き合ってる、か」

「はい。気持ちを押し殺してでも守ろうとしてる。それって、簡単なことじゃない。
だから紗良さんも、無理に押し殺さなくていいんです。自分の気持ちは、心の中に置いておくだけでも、十分」

紗良は少しだけ涙をこぼした。
松浦がそっとティッシュを差し出す。

「ありがとう。なんか……すごく楽になった」

「警護って、ただ外敵から守るだけじゃないんですよ。心も、守れたらいいなって思ってます」

松浦は部屋の見回りに戻っていく。

紗良はその背中を見ながら、心の中でそっと呟いた。

――私は、誰かを信じて生きていくって、こういうことなんだな。