お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

橘が出て行ってから数分後、松浦が部屋に入ってきた。

「橘さんから交代しました。体調、大丈夫ですか?」

「はい、ありがとうございます。ちょっと調子に乗って立ち上がっちゃって……」

紗良は少し恥ずかしそうに笑って、ソファの上で足を投げ出すようにして座り直した。

松浦はテキパキと部屋の状況を確認し、紗良の様子を目で追いながらも、不審物の有無や外の様子に目を光らせていた。

そんな姿を見て、紗良はふっと笑う。

「松浦さんって、本当にしっかりしてますよね。この状態で、私の恋バナとか聞いてくれるのかな」

松浦は視線を紗良に戻し、目元だけで少し笑った。

「聞きますよ。というか……もう、あれは“惚気”ですよね?」

「やっぱりそう見えてたか」

紗良は頬に手を当てて照れ笑いを浮かべた。
「なんか、最初は厳しくて怖くて、近寄りがたかったのに。今じゃ、あの人がそばにいると、安心して……甘えたくなっちゃいます」

「わかります。橘警護官、普段はあんな感じでも、誰かを守るって決めたら徹底する人ですから」

「うん。……気づいたら、好きになってた。気づかれたくなくて、隠してたけど……もう隠せないです。私、きっと、好きです」

松浦は淡々と頷いた。

「はい。だからこそ、私たち警護官は冷静に対処しなきゃいけない。
気持ちの距離が近くなると、リスクも増えるから。でも――」

そこで松浦は、紗良にだけ聞こえるように声を落とした。

「私は、素直になった紗良さんの方が好きです」

「えっ……」

「恋してる女の人って、やっぱりきれいですよ」

そう言いながらも、松浦の視線はすでに玄関ドアへと移っている。
体はすぐに動けるよう、足元の重心も変わっていた。

「……やっぱり、抜かりないんですね」

「当たり前です。私は“護る側”ですから」

紗良はその言葉に、ふっと笑いながらうなずいた。