お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

橘は何も言わず、静かにしゃがみ込むと、紗良の右足首をそっと持ち上げた。

その手つきは、驚くほど的確で優しい。
足を固定するように支えながら、指で少しずつ圧をかけ、腫れや熱を確かめるように触れていく。どこを押せば痛むのか、どこに負担がかかっているのかを、一つ一つ確認しているのがわかる。

「……怪我のあとっていうのは、筋肉が硬くなりやすいんです。油断して急に動くと、すぐに悪化します」

冷静な声。けれど、その奥には、責めるような色ではなく――ただ心配を抱えたまま、黙って支える人の声だった。

橘は足をそっと元の位置に戻すと、ゆっくりと立ち上がる。

「……わかりました。気をつけます」

紗良も、今度は素直に頷いた。
少し照れくさそうに、けれど真剣に目を合わせて。

橘はその言葉を受け取るように軽く頷くと、「松浦を呼んできます」とだけ言い残し、無言で部屋を後にした。

扉が閉まる直前、ほんの一瞬だけ、橘の背中が寂しそうに見えたのは、紗良の気のせいだっただろうか。