お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています

すべての検査が終わったあと、紗良はベッド脇の机に突っ伏していた。肩を落とし、ため息をひとつ。

「……橘さんが医者モード出すと、ほんと、疲れる。」

そのぼやきを聞いた松浦が、そっと部屋に入ってきた。

「お疲れ様です。どうしたんですか?」

顔を上げた紗良は、疲れ切った表情のままぼそりとこぼす。

「橘さんが、検査のとき当然のように手伝おうとしてくるんです。もう医者じゃないのに。」

松浦はふっと微笑み、後ろに手を組みながらベッドのそばへ近づいた。

「なるほどね。でも、それってたぶん――紗良さんに対する愛情表現なんじゃないかな?」

「……あれが?」と、紗良は思わず声を上げた。

橘が無言で袖をまくり、駆血帯を手際よく締めたこと、心電図の準備に入ろうとしたこと

――すべてが機械的に感じていた紗良には、どうにも「愛情」という言葉が結びつかなかった。

「うん。たぶん彼なりの気遣いっていうか…つい手が出ちゃうんでしょうね。前はきっと、自分を抑えてたんだと思いますよ」

松浦の言葉に、紗良は少し黙ってから、ぼそっと呟いた。

「私、まだ知らないことがたくさんあるんだなあ…」

頬杖をつきながら、少しだけ照れたように笑うその横顔を、松浦はやさしく見守っていた。