夕食の時間が近づいたころ、ノックの音とともに看護師が入ってきた。
「採血と心電図、取りましょうね」
その声を聞いた瞬間、紗良の肩がビクッと跳ねた。
あからさまに身体をこわばらせる紗良を見て、看護師が少し困ったように笑う。
「橘さん、お手伝いお願いできますか?」
「えっ」と紗良が怯えた声を出す。橘さんになんて頼んだら、何されるかわかったものじゃない。
しかし、橘は何も言わずにすっと歩み寄ってくると、無言のまま紗良の左腕の袖を静かにまくった。
その動きは滑らかで無駄がなく、どこか冷静で、いつもの橘とは別人のようだ。
看護師がワゴンの上に置いていたベルトタイプの駆血帯を、橘は一瞬で手に取り、手慣れた動きで上腕に巻きつけた。
パチンという音と共に、しっかりと固定される。
(この人……医者の顔になってる)
そう思った次の瞬間、橘の手が紗良の肩と手首をそっと、けれど確実に押さえてきた。
「えっ、ちょっ、流石に暴れたりしませんよ?」
「貧血があるので。倒れられると困りますから」と、橘は静かに、しかし有無を言わせない声で言った。
看護師はそんな二人をにこやかに見守りながら、淡々と準備を進めていた。
針が刺さり、透明なチューブの中を血液が流れていく。
その赤がスピッツにたまっていく様子が、妙に現実的で紗良の胃をきゅっと締めつけた。
(やっぱり……血って見るもんじゃない)
思わず目をぎゅっと閉じる。
そのとき──耳元で、低く、優しい声がした。
「大丈夫です。深呼吸して」
それはまるで、直接肌を撫でるように柔らかく、紗良の心のざわつきを静めていくようだった。
「採血と心電図、取りましょうね」
その声を聞いた瞬間、紗良の肩がビクッと跳ねた。
あからさまに身体をこわばらせる紗良を見て、看護師が少し困ったように笑う。
「橘さん、お手伝いお願いできますか?」
「えっ」と紗良が怯えた声を出す。橘さんになんて頼んだら、何されるかわかったものじゃない。
しかし、橘は何も言わずにすっと歩み寄ってくると、無言のまま紗良の左腕の袖を静かにまくった。
その動きは滑らかで無駄がなく、どこか冷静で、いつもの橘とは別人のようだ。
看護師がワゴンの上に置いていたベルトタイプの駆血帯を、橘は一瞬で手に取り、手慣れた動きで上腕に巻きつけた。
パチンという音と共に、しっかりと固定される。
(この人……医者の顔になってる)
そう思った次の瞬間、橘の手が紗良の肩と手首をそっと、けれど確実に押さえてきた。
「えっ、ちょっ、流石に暴れたりしませんよ?」
「貧血があるので。倒れられると困りますから」と、橘は静かに、しかし有無を言わせない声で言った。
看護師はそんな二人をにこやかに見守りながら、淡々と準備を進めていた。
針が刺さり、透明なチューブの中を血液が流れていく。
その赤がスピッツにたまっていく様子が、妙に現実的で紗良の胃をきゅっと締めつけた。
(やっぱり……血って見るもんじゃない)
思わず目をぎゅっと閉じる。
そのとき──耳元で、低く、優しい声がした。
「大丈夫です。深呼吸して」
それはまるで、直接肌を撫でるように柔らかく、紗良の心のざわつきを静めていくようだった。



